第31話最高幹部

「ラナ、明日は休みにできなか?」


「なぜですかギュンターさん?

 今乗りに乗っていますから、休まず狩る方がいいんじゃないですか?」


「それも分かるんだが、ちょっと息抜きがしたくてな。

 それに、若い連中が色々聞きたがっている。

 ドウラさんじゃ実力と経験が違い過ぎて、参考にできる気がしないそうだ。

 それと、稼げる者が若い連中に飯を食わせてやる伝統を復活させたくてね」


「昔はそんな伝統があったんですか?」


「ああ、俺くらいの連中は、大なり小なり喰えない時代に世話になった。

 厄竜が二度も来て、稼げる先輩が全員王家に強制仕官させられるまではな」


「確かにそういう伝統は大切ですね。

 でもなぜあのドウラさんほどの方が復活させなかったのでしょうか?」


「さあな。

 俺程度じゃドウラさんの考えや気持ちは分からんよ。

 ただそれよりも大切な事があるんじゃないのか」


「そうですね。

 分かりました。

 明日は休みにしましょう」


「まて、まて、まて。

 俺は反対だ。

 完全休養日にまでする必要はない。

 半休にしようぜ。

 午前中だけ狩りをして、午後から宴会にしようぜ。

 万が一飲み過ぎてしまったら、翌日の午前を休んで午後だけ狩りをするんだ。

 そうすりゃあ腕が鈍る心配をしなくてすむ」


「ダニエルはこう言っていますけど、ギュンターさんはそれでいいですか?」


「ああ、それでいい。

 若い奴に話を聞かせてやって、腹一杯食わせてやれれば十分だ。

 食堂のおばちゃんたちには俺から話をしておく」


「頼みます、ギュンターさん」


 初めて鉤竜を狩ってから六カ月、ドウラさん達抜きで、魔術が仕えないギュンターさん達と一緒に鉤竜を狩ってから三カ月、私の環境は激変しました。

 細かい事は別の機会に話しますが、ゲイツクラン内での立場だけでも大きく変わって、ドウラさんが可愛がっている単なるクラン員から、幹部になりました。

 それも最高幹部だというのですから笑ってしまいます。


 経験や年齢も考慮されますが、冒険者が一番評価されるのは実績です。

 ドラゴンスレイヤーというだけで、今の魔都では一目も二目おかれます。

 しかも私は単なるドラゴンスレイヤーではないようです。

 魔法の使えない前衛職だけ鉤竜を狩ったパーティーの、リーダとされたのです。

 さすがにギュンターさん達の上席にはなりませんでしたが、同格の最高幹部です。

 すべてはドウラさん陰謀です!


 そのせいで色々な雑事が増えてしまいました。

 これもクラン員の責任と義務なのでしょう。

 破竜隊としての狩りの日。

 陰でリーダーパーティーと呼ばれているパーティーの狩りの日。

 女性新人パーティーの狩りの日。

 このローテーションで狩りをすることになっていますが、今回はリーダーパーティーの日にあわせて宴会ですね。

 正直雑事は苦手で、一人の冒険者として、一日でも早く禽竜を狩りたいのですが、ドウラさんはいつ決断してくださるのでしょうか?

 

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