第149話 大分県の開発度を400%まで酷使してみよう

 支配するとは、武力で逆らえないようにする。というのは当然だが、

『その統治者なしでは生きるのが非常に困難になる』

 という条件も付けられるのではないかと思う。


 或るならず者国家が原子力発電所を占拠しても仕組みが理解できなかったので、その職員を殺害することはできなかった。


 自分たちが生活する予定の村の井戸に毒を巻く奴はいない。


 値段について色々いわれているが、日本でインターネット業者が消えたり、電気業者で実際に電力を生んでいる大手が消えたらら日本人の生活は崩壊するだろう。

 つまり、インフラを征する者は実質的に生活の一部分を支配しているのと同じなのである。

 だから、面倒なトップ調整役は領主に丸投げする。

 ただ、生活を維持する部分はこちらがしっかりと握る。

 誰も損をしない緩やかな征服である。


 そのためにも、豊後の開発度を増やして生産性を増やすのが重要である。

 そこで現在の豊後の人口を8倍くらいに増やそうと思うのだが…


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「そう簡単に人は増えないでしょうなぁ…」

 と家老たちは言う。

 食糧問題は解決すれば、貧しい者たちはやって来る。ただ、そう言う人間を教育して社会の構成員にするのは時間がかかるし、自活出来ている人間はその土地を離れる必要が無い。

 豊後の場合、メインとなる府内はそこまで広くないので大阪や東京みたいな大都市にするにはかなり埋め立てが必要になるので受け入れる器も足りてない事になる。

「だが、将来を考えると人口の増加は必要な事ではあるのですよねぇ」

 と吉弘の兄上がフォロー半分、現実半分で断言する。


 人口は純粋な資源である。


 内政や人口集めに注力してるのは単に『戦争がイヤだから』というだけではない。

 例えば秀吉が最後に滅ぼした、関東の北条氏は善政をしいていたし内政にも力をいれていた。

 

 おまけに小田原城という巨大な防衛施設も備えていたのに最終的には敗北した。

 

 考えてみれば戦争回避政策で進んでいたら、一番最前な行動を取っている御手本とも言える存在である。

 それなのに、それでも滅んだのである。

「まあ、日本全国VS関東じゃあ戦力差が有りすぎですからね」

「それでも籠城して何とかなると思った考えも凄いな」

 俺なら、そこまで日本が統一されてたら即刻、降伏というか家臣になるね。


 戦国時代の人間に説明するなら、奥州藤原氏のような栄華を誇った一族でも、日本中を敵に回せば一代で滅ぶのである。


 相手はロシアやナチスじゃないし、降伏してもそこまで酷い目にはあわされないだろう。

 そういう認識もあってか、どうやら戦乱の世でしがらみのない民衆は『強い者に従った方が安全だ』というのが、最重要視されるらしい。

 それは善政を敷く君主に仕えるよりも魅力的にうつる。

 平和な現代日本だと命の危険を感じる時なんて、過労死とかパワハラによる鬱とか仕事のしすぎによる不健康による急死程度がほとんどだが、戦国時代の場合、予告なしに襲われて一家どころか村が全滅する。というパターンもある。

 だから、内政に力を入れつつ【豊後にいれば安全だ】と思われる位の兵力と防衛力、つまりはある程度社会の一員となれる人口を揃えて置きたいのである。


 そのためにも人口的にまだまだ少ない大分の府内の海を埋め立てて、大野郡や直入郡の人口を増やしておきたい。

 そのためにまずやることは…


「ダムの作成、住宅地の整備、そして不要な山の破壊だな」


「最後の1つは何の意味が……」

 と、質問が出る。

「人間は生きるために水が必要だし、米を育てるのにも水が要る」

 そんな大事な水に対して、大分市では水源地に産業廃棄物処理場を建てるなどというあり得ない政策もあった。

 おまけに処理場を作ってしばらく運営した後、計画倒産して賠償金から逃げまくっている亀●とかいう業者は『敷地内にドーベルマンを飼ってます』という看板を張っててどうみてもまともな業者ではなかったのだが、それを許可した平松知事はその前に東京に消えたし、ろくでもない時代だったな。あのころは。

 処分場が出来て20年たった今になって産業廃棄物の汚水が染み出して川に流れ込まないか議論されているが、計画時に気がつけよと思う。


 なおその●柳という会社は四国でも同様の処理場を作っていたらしい。

 未だに処理場には社長の銅像が残っているが、ハンマーでたたき壊したい。


 とまあ、公共工事は国の根本だけに、やり方を誤ると国の舵取りも誤るのである。

 だから、基本方針はしっかりしないといけない。

「まあ、水の確保と貯蔵は国の根本だ。特に一カ所だけだと破壊された時の被害が大きいから、数カ所に分散しよう」

 平和な時代なら大型のダム造るだけで良いのだけど、戦争になって敵から水門破壊されたら下流が深刻な被害を受けるし、村同士での水利権もうるさいだろう。

 だから、国東みたいにため池の数を増やしておく事にする。これは前からやっていたが、正式な基本方針とする。

 次に住宅地。

 これは現在大分市の●●ニュータウン。とか●●団地という名前の土地を思い出せば楽勝だ。

 明野団地はピーク時の2001年には人口が約2万4千人もいたそうだし、高江ニュータウンも4000人位は人がいる。田尻、寒田、医大ヶ丘と大分県人以外には『東京ドーム3個分』程度に分かりにくい表現だが、40万人都市ていどの住宅地は確保できると言う訳である。

 これらは農業用の田んぼが無い状態なので、実際は半分くらいになるだろうが、それでも現在の人口よりは増えて25万人は確保できるだろう。

「だが、一番注目しているのはレンコンの町と言われた直入の竹田だ」

「あそこは、急峻な山が多くて人がたくさん住むには不適と思われますが」

 と、現地を知る領主が言う。

 阿蘇の溶岩が雨で削られ、複雑な地形を持つ竹田は日本一トンネルが多い市と言われており、市内全体で70以上のものトンネルがある。

 一か所のルートを除いて市に入るには必ずトンネルを通る。と言われてる。

「だから、邪魔な山を全て壊して安全な土地にするのだ」

 切り立った崖と言うのはいつかは崩れる。だったら、先に壊して災害に備えたり、ついでに石を埋め立てや工事用に使った方が良いだろう。

 まあ『山の神の祟りがある』と反対する人間は出そうなので、小さな山ともいえない山の多い竹田から初めて、大野郡や別府へと進めて行こう。

 幸いな事に、1550年に別大国道を作るために高崎山の仏崎を徹底的に壊したが、大して祟りらしき事も起こってないため、会議に参加した人間の7割しか反対は起こらなかった。


「それ、多数決なら一瞬で負ける割合の反対なのですが…」


 高崎山の時は10割反対だったから、3割も賛成に回っただけでも快挙じゃないか。

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