第89話 寺に入るまで治らない病
痔は寺に入るまで治らないと言われる病気である。
その原因は大きく分けると2つ。
・肛門内の裂傷の悪化
・血行不順により細胞が腐りかけている
内臓はデリケートな器官である。
なので便が堅いと大腸を傷つけ、傷口にばい菌が入って腸壁がただれるパターンがある。
こちらは食物繊維を取り、毎日適度に白湯を飲んだり、体質にもよるが牛乳を飲むと良い。
女性の場合骨盤の構造上便秘になりやすい体質の人もいるが、腰痛の対策を守ればある程度改善するはずだ。
「というわけで、痔の薬として牛乳を少しずつ普及させていくか」
「なんか将来の日本で、ものすごく悪いイメージがつきそうなんですが…」
とつっこみが入ったが、腸を動かすのにあれはかなり良いからとりあえず飲む習慣からはじめないと話にならないからなぁ。
「…あの殿様。もうひとつの『細胞が腐りかけている』ってどういう事ですか?」
痔持ちの人間から質問がはいる。
「ああ、人間の体は、血が巡らないと栄養がたりなくて腐って行くんだ」
『とこずれ』で検索すると(グロ画像注意)分かるのだが、人間の体は栄養が足りなくなると細胞がただれて溶けていく。
実感がしにくい方は腕をひもで縛って血が回らない様にして見るとよく分かるのだが、ピリピリしびれてから次第に痛くなってくる。
座りっぱなしで発生する痔は、マイルドにこの状態になっている事が多い。
「肛門ってのは皮膚がデリケート…柔らかくて弱いのに、血が足りなくなりやすくてただれやすい」
なので、尻周りの血行に違和感を感じたら1時間おきに立って軽く体を動かす習慣を付けるべきである。
そして、風呂に入って血行が良い状態の時に、臀部…尻の表面を揉んだり擦ったりして血を巡らしたり、そけい部、太ももの付け根の大動脈辺りから太もも全体を滞っている血を押し流すイメージでマッサージして血流を良くする。
「この時重要なのは患部は絶対に触らない事」
ただれた部分は割れかけた風船と同じである。変に触ると、腫れたりする可能性もある。
「ちなみに、完全にただれている場合は切って縫合した方が良い場合もあるので、出血したりとか出来物が大きな場合は病院を作ったので診察に来てくれ」
治療代は国が肩代わりする。
国民が健康に働いて生産性が上がる方が利益が大きいからだ。
というか、酒飲みの父親や伯父さんがひどい痔持ちで苦しんでいたので治せるものは治してもらいたい。
「なお、これは痔に限った話ではないが、皮膚病は全般的に清潔さに気をつけているとそこまで酷くない。逆に不潔だと他の病気と合併して地獄の様な苦しみを味わう場合があるから、毎日の入浴は欠かさないでくれ」
フランス革命前に暗殺されたマラーというの皮膚は、皮膚病によって水疱だらけとなり傷口から体液がにじみ、地獄の様なかゆみを生んだという。
この皮膚病は、「癜風(でんぷう)」といわれる病気で熱帯地方では一般的な皮膚病である。高温、多湿の環境下で多汗により菌が増殖して発病するのだが、普通はそこまで酷くならない。
彼がそこまで病気を悪化させたのは、敵対勢力である王党派に追われて屋根裏部屋や下水道という不潔な場所に隠れ住む事で悪化したと言われている。
彼は暗殺の直前になって、安心して生活できる家に落ち着いたが、皮膚の痒みを鎮めるために常に浴槽で入浴をしながら、仕事をし、人と面会したという。
不潔は軽い病気を悪化させるのである。
ちなみに皮膚病は鶴見岳の北側にある塚野鉱泉や鉄輪のさらに奥の明礬温泉が効果があるので、湯治場として少しずつ開発を進めていこう。
別府の湯量は世界一。
勝手に溢れてくる分はストックもできないので、貴重な資源として有効活用させてもらおう。
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という事で大友家の領民たちに治療場を解放したらかなりの数の人間が療養にやってきた。
別府の砂湯はリューマチや痛風にも効果があるし、衛生が改善されれば乳幼児の生存率も上がるだろう。
ついでに榊原康勝とか穴山梅雪みたいな痔持ちで有名な武将が湯治に来てくれたらその場でヘッドハンティングするのだが
「それは時代が違いますね」
とさねえもんからツッコミが入る。
まあ、そんなラッキーは起こらないだろうけど、大谷 吉継あたりの武将とか来てくれないだろうか。
「まだ生まれないんですって…」
と再ツッコミが入る。
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戦国武将は乗馬をするのでお尻が痛めつけられ痔であった可能性は高いのですが、上井覚兼みたいに日記に書くか、榊原康勝とか穴山梅雪みたいに死因に直結してないと知られる病気ではないのであまり話を膨らませませんでした。
個人的には武田信玄とか、男色と長トイレのダブルコンボで痔だったのではないかと思うのですが、距離が遠いので吊り上げるのは無理だろうなと思いました。
彼が入浴していたら立派な別府の観光資源となっていたのですが…
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