第46話 大内義隆を救済するため海賊王に俺はなる(日本の
前回までのあらすぢ
部下の殆どが寝返り状態なのに、本気で取合わない大内家がマジやばい。
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戦国大名と言うのは、地方領主のまとめ役である。
直轄領地の旗本の数は一番多いが、多すぎると領主が「自分の家を取られるかもしれない」と身の危険を感じて他の家に寝返るかもしれない。
なので2・3家が手を結べば倒せるけど1家だけが反乱を起こしても、他の家が大名に味方すれば倒せない位のバランスで成り立っている家が西国では多い。
(例;1580年の大友家、1577年の日向伊東家、1570年の肥前大村家)
大内家も九州の豊前や筑前は杉氏や内藤氏を城代として配置し統率させている。
そんな彼らも匙を投げて大内を見限っているのが現状だ。
ハッキリ言って、この時点で織田信長かスターリンでも憑依して裏切り者を粛清しない限り大内義隆が返り咲く事は無いだろう。
かといってこのまま陶が反乱を起こすと1554年の厳島で敗北し、戦争火種となる毛利家の台頭を許す事になる。
史実の大友宗麟が『毛利狐』とガチ切れしたウソツキ領主のせいで九州北部は戦乱の家中となり、多くの人間が毛利の甘言で反乱を起こし討死した。
もしも江戸時代の前に毛利家が滅んでいたら松永弾正や斎藤道三と並ぶ悪人として名を残したんじゃないかと九州人的に思う。
「戦争のセールスマンと言ってもいいんじゃないかな?」
「関係者から怒られますよ」とさねえもんから窘められた。
なので本当なら大名の座は弟に譲って、陶の反乱防止のために色々暗躍したいのだが部下から止められた。
そこで
「瀬戸内海を統べる事で大内家を救ってみようと思う」
と提案した。
「瀬戸内を制圧することと、大内殿を救う事とどう関係があるのですか?」
「日本は島国じゃ」
俺の言葉に家臣たちはピンとこない。なので続けて
「つまりは海洋国家である。海洋国家で主要な交通手段は本来船なのじゃ」
電車やトラックが交通の主力となった今では信じられないが、大分は大阪などの近畿からくる船の玄関口だった。
大分は九州の玄関口だった。のである。
すでに2回くらい書いている気もするが、大分県が新幹線から除外され零落っぷりをさらしている現在、しつこく書かないと忘れられそうだからで再び記す。
「なので、海路を制する者は日本の西を制すと言っても過言ではない」
そう言うと、後ろでさねえもんが地図を広げ
「そうです。安全な流通路の確保は商売の基本。荷物を奪う山賊や海賊が出ないことこそが商売の活性化、ひいては飢饉の撲滅、国の発展にも通じます!」
と力説する。
なんでも太閤●志伝というゲームで大商いをしようと投資したら商品輸送中に山賊海賊に襲われて有り金すべて取られたことが何度もあるのだとか…
「人が頑張って稼いだ金を奪うようなクズどもは大砲のチリに変えてやりたいくらいですが、それやると犯罪ですから犯罪行為に手を染めなくても食っていけるように制度を整えましょう」と言われたことがある。
要は、さねえもんから聞いた大友宗麟の後援会で防衛庁の偉い人から聞いた説をそのまま言ってるだけなんだけど、実際に国の防衛に当たっている人の言葉は重みが違うものだと思った。
ベッキーとかしきりにうなずいてるし、臼杵兄弟も尊敬の目で見ているし。
「すると、国を豊かにすることで大友家が周辺のまとめ役になろうということですか?」
うーん、ちょっとちがうなぁ。それだと俺が死ぬほど忙しくなるじゃないか。と思ったがここは綺麗な建前を言うことにした。
「衣食足りて礼節を知る。という言葉を知っているか?」
「管子の言葉ですな。倉庫実(満)つれば衣食が足り、衣食が足りれば栄辱を知る…でしたか」
へー、そうだったんだ。知らなかった。臼杵は博学だな。
「要するに、始まりがどうであれ戦乱が続くのは国庫が乏しく、富が万民に行き届いていないのも一因ではないかと思うのだ」
トップの仕事とは他国を滅ぼすことでも、強い軍隊を作るためでもない。
民が生存できるだけの社会を創り、犯罪を抑止し、人間の集団を維持することだ。戦争も軍隊もそれを維持・発展する手段でしかない。
つまり、いくら陶の阿呆がデマを流そうが大内政権の方が自分たちにとって利益になると思えば従わないだろう。
だから食料の流通事情を改善したり生産能力を上げれば、特に俺が管理しなくても国は治まると思うのだ。特に俺が管理しなくても。(とても大事なことなので2回言いました)
「その一歩として、大内家だけは瀬戸内海での運行の安全を保障し、貿易でも優遇する。ほかの者たちとは差別待遇を与えるようにする」
「そこまでして大内は守るべき家でしょうか?」
ベッキーが問うてきた。
まあ無償で他人のためにがんばるというのは納得がいかない人間もでるだろう。だが、見返りは十分あるのだ。
「幕府が混乱している今、中国との貿易の権利、勘合符を持っているのは大内家だけじゃろう」
そう、現在の日本で中国と正式に貿易ができるのは大内義隆ただ一人なのである。
1556年に大内義長と大友宗麟は共同で中国に船を出したが正式な使節とは認められず貿易はできなかった。幕府は以前貿易船を出したが、京都から何度も逃げなければいけないほど零落した今では不可能だ。
その権利を守るためにも大内義隆は保護したい。
特に快適な生活の為にも中国の優れた技術、多様な植物、豊富な鉱物資源は確保したい。
「本音が漏れてますよ」
また、大内家が内政に力を入れていたおかげで吉川弘文館の大内義隆P137~145によると大内家には活版印刷が既に行われており、桂庵玄寿という中国に渡ったお坊さんは薩摩に行き「大学章句」という本を刊行したらしい。
また義隆の時代には南村梅軒という僧侶が四国の土佐に渡り数学を広めた。
最近では灰吹き法という金や銀の収穫量を増やす技術が1540年代には石見銀山で確立されていたという説もある。
戦争せずに文化発展をするとこのような副産物が出てくるのだ。
陶のような蛮族には過ぎたものだから、それらの知識人を豊後に招きたい。
そして別府楽天地や日田の鯛生金山あたりで金の採取も行うのだ。
そのためにも日本国内の船による貿易を活性化させる必要がある。
たとえよい品物があっても買う人間がいないと儲けは出ないからね。
「そのためにも瀬戸内の海路を制圧し、貿易の安全をはかる必要がある」
そういうと、瀬戸内海の一点を指す。
「そのためには村上海賊の制圧が必要ですな」
「さすが臼杵、その通りじゃ」
京都への外交を担当していた臼杵兄弟が一目で問題点を見つける。
そう、瀬戸内海には村上氏という海賊が海賊行為を行っているのだ。
彼らは金を払えば安全を保証するが、一歩間違うと乗員たちは酷い目に遭った的な事がフロイス日本史に書いてあるらしい。
「奴らは水先案内人という役割を果たしてはいるが、基本的には海の武士たちじゃ。豊後から都に使者を送る際、他国の領地を貴重品を持って移動するのはどうも不安じゃ」
戦略シミュレーションゲームだと海を領地とする事は少ないが、海は立派な支配地であり交通路だ。
「四方を味方に囲まれて攻める場所はないと思っていただろうが、豊後の東には広大な領地が眠っておる」
ここをおさえて周囲の沿岸を自由に進入できるようになれば大友家が貿易を独占することだって不可能ではない。
「なので戦国時代の海賊王に俺はなる!」
「そのネタ550年後じゃないと通じませんよ」
なにぃ。懇親のギャグだったのに…。ワン●ースくらいよんどけよ。
「無茶言わないでください…」
「しかし、当家では海賊退治が可能とは思えませんが…」
「いや、大型の鉄甲船を造らせたから可能だ」
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「鉄の船など水に沈むに決まっているではないですか!」
ベッキーが言う。まあ、現物見たことないとそう思うよね。俺も未だに飛行機のような鉄の塊が空を飛ぶのは信じられないし。
ただ、船に関しては納得ができる。
「これを見てくれ」
そう言って、10cmの模型を出す。
「これは船の模型ですか?」
「ああ、実際の1/400程度の大きさで作ってある」
この模型をたらいの水に乗せると、沈まずに水に浮かんだ。
浮力というのは、沈んだときに押し退ける水の重さに比例する。小型の船では沈むが、大型の船なら水に浮く…という理論である。
「だから、この模型を大きくすれば沈まない。というわけじゃ」
「理論の上ではそうでしょうが、そのためには多くの鉄も必要ですし、水が入らないように大きな一枚の鉄で作らなければならないのでは無いですか?」
そんなお金も技術もこの国にはないのですぞ、とベッキーや臼杵が言う。
「そうかなぁ」
「ええ、そんな神の御技は不可能です」
「できると思うんだけどなぁ…」
「無茶をおっしゃらないでください」
「だってもう作っちゃってるし」
「……………………今なんと?」
遠くで煙が上がっている。
真っ黒な黒煙をあげて海原を走る船は沈むことなく豊後の沖へと向かってくる。
巨大な鉄の要塞が近づくにつれ、住民たちが奇異の目で飛び出しているのが分かる。
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「なんですかぁ!これは!」
巨大な鉄の船を見て目玉が飛び出そうなくらい驚く臼杵兄。
臼杵弟も仰天のあまり目玉を丸くしているし、ベッキーは眉に唾をつけて何度も見ている。
こうすると幻とかが消えると言われた迷信がある。実際にしているのを見るのは初めてだな…などと思っていると臼杵兄が
「あああああああ、あれは何ですか」と質問してきた。
そこで俺は全長40mのオーバーテクノロジーを指さし、誇らしげにこう答えた。
「大仏建立の技術を使って、津久見のセメント鉱山で鋳造した船だ。80人乗り。大砲も5基積んである」
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そろそろ本格的に戦国時代の文化を破壊していきます。
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