517球目 甲子園のマウンドに上がるまで成仏できない

「ピッチャー取塚とりつか君!」


「よっしゃあ!」



 取塚とりつかに憑く夕川ゆうかわは上機嫌でマウンドに登る。死んでからも憧れたマウンド上に自分がいる。



「9番レフト夜野よるの君」



 幽霊の夕川は怖いもの知らずだ。大胆にもストレートを3球続けて投げ、夜野を三振に抑えた。



「ストラックアウト!」

「MAXやぁ!」



 自己最速の149キロを計測し、ガッツポーズをする。



「1番セカンド友野ともの君」

「次も抑えたる。んん?」



 東代とうだいは初球スローカーブのサインを出す。夕川は首を横に振り、あくまでストレート勝負にこだわる。



東代とうだいはわかっとらん。足速い非力な奴ぁ力で押したらええねん」



 夕川はストレートをど真ん中高めに投げた。友野はすかさず打ったが、センターフライだった。



「あと1人ィ!」



 次の千本せんもとも高目のストレートを打たせて、ショートフライにした。今日の取塚とりつか(夕川)のストレートは走っていて、全球140キロ超だった。



「オーノー。キャッチャーのジョブがナッシングです」



 東代とうだいは肩をすくめて、彼の直球一本鎗にあきれていた。



(続く)

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