516球目 虹の始まりを知らない

 夜野よるのは超能力の使用回数が切れたので、ピンチを作らせんと懸命に投げる。



 番馬ばんばを変化球で空振り三振、東代とうだいを際どい外角低めアウトローのストレートで三振、宅部やかべをシンカーで泳がせてショートゴロ、三者凡退に抑えた。



 浜甲はまこう学園は100球近く投げていた水宮みずみやから、宅部やかべにピッチャー交代した。宅部やかべはカーブを低め、ストレートをコーナーに集め、埼玉さいたま翔出しょうで打線を三者凡退に抑えた。



 8回裏、夜野よるのから三原みはらにピッチャーが替わる。



「よろしくお願いしまっス!」



 三原はセット・ポジションから素早くボールを投げた。セーフティーバントを狙った真池まいけはキャッチャーファールフライに倒れる。



津灯つとうさん、出来るだけ球数を投げさせて」


「はいっ」



 粘りの津灯つとうは三原のボールをひたすらカットする。



 最速137キロのストレート、スライダー、カーブの3球種があるが、いずれも平凡だ。



「そろそろ打とかな」



 11球目、三原はゆっくり足を上げ、手から虹を出した。



「あっ!」



 虹の輝きに魅了された津灯つとうは、バットが動かない。



「ストラックアウト!」


「レインボー・カーブ決まったぁ!」



 虹の軌道で曲がるスローカーブは、あと1球投げられる。その1球に気を取られた山科やましなはライトフライに倒れた。



(続く)

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