420球目 絶対に負けられない(女子達の決意)

「ふぅー、疲れたぁ」



 津灯つとうはおばあちゃんのように腰をトントン叩きながらイスに座る。



「インタビュー、お疲れ様」


「インタビューする人、イケメンやった?」



 津灯つとう飯卯いいぼう監督は新聞記者やテレビ局のアナウンサーからの質問攻めにあっていた。津灯つとうは大アクビしてから答える。



「せやねぇ。山科やましなさんほどやないけど、爽やかなイケメンならおりましたよ」


「マジー? うちもインタビュー受けたーい!」


「盗塁しまくったらインタビューされると思います」


「っしゃあ! 10個ぐらい盗んだる!」



 千井田ちいだはチーター化して家庭科室内を走り回る。彼女の夢はメジャーの盗塁王だ。



「明日、たくさん観に来られるやんね。緊張するなぁ」


「スーちゃんはいつも通り1打席に全集中すればええから、マシやって。あたしはこの夏ずっとフル出場やからねぇ」



 津灯つとうは軽くストレッチして体をほぐす。



「この野球部のみんな、麻里まりちゃんにかれて入っとるもん。麻里まりちゃんがおらんくなったら困るよ」


「うん。あと1試合頑張ったら、ご褒美に西北のスイパラ行こ」


「肉食べ放題の店もな!」



 狩猟豹チーターが舌なめずりして、目を爛々と輝かせている。



「うん! 明日も勝つ!」



 津灯つとうの眼には、浜甲はまこう学園の名が刻まれた甲子園球場のスコアボードが映っている。



(続く)

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