418球目 絶対に負けられない(3年生の決意)

 決勝に向けた猛練習後、山科やましな番馬ばんば烏丸からすまの3人は学校近くの防波堤ぼうはていのテトラポット上でたたずんでいた。



「もう5か月ぐらい前か、僕達が野球部に入ったんは」


「せやな。津灯つとうにボールぶつけられた金玉、今でも思い出すわ。クソ痛かったぁ」



 山科やましなはバスケのフリースロー勝負に負け、番馬ばんばは野球で人殺し可能と聞いて入部した。



「俺っち決勝終わったら、津灯つとうちゃんに告白するんや」



 野球部殺しを退治した津灯つとうに一目ぼれして入部した烏丸からすまがボソッとつぶやく。波しぶきが彼の足元にかかる。



「おいおい。死亡フラグ立てんのやめろや」


「なぁんも活躍してへんくせによぉ」


「俺っちは8打点、チームトップの打点王やで、ヘボバッター達」



 烏丸からすまは口笛を吹いて2人を挑発する。2人は瞬時にぶち切れた。



「何をー! 俺様はホームラン打っとるぞ!」


「僕だってサイクルヒットしとるよ!」



 2人は烏丸からすまを羽交い絞めにして、口ばしから泡を吹かせる。カニが慌てて隠れる。



「ギブギブ! 殺す気ガァ!」


「すまんすまん。調子乗る奴は絞めろと教わったもんでなぁ」



 番馬ばんばは尻をポリポリかきながら豪快に笑う。



「まったくぅ。これだから脳筋のうきんは」


「今何か言うたか?」


「あっ、いや! 番馬ばんば様はカッコいいパワーヒッターやなぁと」


「せやせや。ガハハハハハ!」


「調子ええなぁ、2人とも」



 山科やましなは野球場の女性達を思い出す。彼女達は、自分の一挙手一投足に対して歓喜の声を上げてくれた。もし甲子園に出たら、その歓声は一段と大きくなるに違いない。



「とにかく、打って打って打ちまくって、甲子園行こう!」


「もっちろん!」


「カァー!」



 3年生のやる気が最高潮さいこうちょうに達した。



(続く)

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