377球目 理事長夫人の野球狂の血は争えない

 浜甲はまこう学園の理事長室にて4K対応大画面テレビがつけられている。



 綺麗な大画面上に、浜甲はまこう学園野球部の戦績が映っている。



<ご覧のとおり、1回戦コールド勝ち以降、いずれも接戦になっています>


浜甲はまこう打線には、ここぞの時の集中力がありますね。臨港りんこう学園戦での最終回の攻撃は見事でした>


<一方の良徳りょうとく学園は、少ない点を投手陣で守り切る戦いをしています>


<1年の刈摩かるま君が調子いいですから、1点あれば十分かもしれないですね。浜甲はまこうのエース・水宮みずみや君も同じ1年生。同学年ライバルは燃えるでしょう>


刈摩かるま君燃えに燃えて、浜甲をコテンパンにやっつけちゃってちょうだい!」



 柳生やぎゅう理事長夫人はギラギラした眼で、TVを食い入るように見ている。隣の園田そのだは申し訳なさそうに口を開く。



「あ、あのー、今回は呪いやドーピングはされないんですか?」



 八木やぎ学園にインチキバット、摩耶まやや兵庫連合戦では呪い、臨港りんこう学園に筋肉増強剤を渡してきたが、いずれも実らなかった。



「もうここまできたら、小手先の呪いやドーピングではどうにもならないわ。浜甲はまこう野球部は思ってたより強い。クソ強い。だから、良徳りょうとく学園は頑張って勝って、勝て、勝てぇ!!」



 彼女は野球狂の父が乗り移ったように、目を血走らせてTVに向かって叫ぶ。園田そのだは彼女の豹変にドン引きして、早くこの試合が終わってほしいと時計を見ていた。



(続く)

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