254球目 ヒーロー着地はヒザによくない

 番馬ばんばさんの打球は、ライト線ツーベースヒットコースだった。だが、龍水りゅうすいがジャンプしてもぎ捕った。打球の勢いに押されることなく、両足・片手の三点を地面につける“ヒーロー着地”。すかさず一塁を踏み、宅部やかべさんもアウトになった。



「チッキショ―!」



 番馬ばんばさんは怒りのあまりバットを折り曲げた。



 くそぉ、恐ろしい守備力だ。ファーストじゃなくて、ショートやセカンドを守れよ。



 続く真池まいけさんが三振に倒れて、5回表は無得点に終わった。



 5回裏の満賀高校の攻撃は三者凡退で、あっさり終わる。俺の所に打球が飛んでこなくて良かった。

 


 6回表は、津灯つとうからの好打順だ。俺の左ヒザが問題なければ、ホームランだって打てるのに。



「なぁ、火星ひぼし。オラゴン星人の力で、このヒザ、何とかしてくれない?



 俺は火星ひぼしにそっと耳打ちする。今日の彼はまだ2回しか超能力を使ってないので、セーフだ。



「傷状態確認」


「ああ。こんな感じ」



 俺は包帯ほうたいをほどき、ズボンをめくり上げる。まだヒザは赤く染まり、ジンジン痛む。



<オイラの細胞さいぼうでコーティングしたら治るけど、一時的にオラゴン星人本来の姿になるんだ>



 火星ひぼしのテレパシーが俺の頭に響く。ケガは治るが、ドラゴンっぽい姿になるのか……。迷うなぁ。



(続く)

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