221球目 犬も歩けばバットに当たらない

 この回を0点に抑えれば、次の攻撃で番馬ばんばさんに打席が回る。



 大量の汗を左腕でぬぎ、大縞おおしま相対あいたいする。



 ここまでの大縞おおしまはサードライナーとキャッチャーゴロ。長打はない。それでも、丁寧に低めを突く。まずはアウトコースにストレート。



「ストラーイクッ!」



 次も外のストレート。俺が投球モーションに入ると、大縞おおしまがスイカ割りのようにバットを振りかぶる。



「ワオオオン!」



 叩きつけた打球は千井田ちいださんの前へはねる。猫じゃらしとたわむれる猫みたく、バウンドしたボールを捕まえられない。ボールが彼女の後ろを転々とする。



「セーフ!」



 ノーアウトのランナーが出てしまった……。名護屋なごやが送りバントを決め、夢見ゆめみが謎の力でフォアボール。夢見ゆめみの打席中に大縞おおしまが盗塁を決めたため、1死1・3塁のピンチだ。



「クラヨシでゲッツーを捕りますブハ―」


「おう、任せフガ―」



 あー、暑すぎる。さっさとチェンジして、ベンチの日陰に入りたい。



 意識は低めに全集中! 低め、低め、低め、あっ、汗でボールが……。



 高めに浮いた棒球を蔵良くらよしが打つ。打球は無人の外野へまっしぐら。



 マズい、この回3点入ったら、コールドゲーム寸前の6点差になっちまう。誰か捕ってくれー!



(続く)

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