ゲームセットは聞こえない～超能力野球奇譚～

166球目 偵察がバレたらいけない（六甲山牧場高校）

　本賀（ほんが）と火星（ひぼし）の無口コンビは、六甲山（ろっこうさん）牧場高校に来ていた。

　畜産業を学ぶ高校とあって、校庭一面が緑の牧草に覆われている。その校庭で、フレッシュグリーンのユニフォームの野球部員が遊んでいた。

「ハイ！　オレの勝ちー。ジュースおごってなー」

「クッソ―！　また負けたメエエエエ！」

　馬獣人の女子とヤギ獣人の男子が駆けっこをしていた。その近くで、牛獣人の女子と羊獣人の男子が寝そべって、草をほおばっている。豚獣人とニワトリ獣人の男子はグラビア雑誌を読んでいる。

「ゴラァ！　そろそろファイアーウルフノックやっぞー！」

　ボーダーコリー犬男子が叫ぶと、獣人達が一斉にそれぞれのポジションに散る。ボダコのノックは打球が飛びすぎたり、死に過ぎたりと、めちゃくなものだ。しかし、部員達は楽しそうにボールを追いかけている。

「動物天国」

　火星（ひぼし）は水筒の真ん中の生態系記録フォルダに、彼らの隠し撮り写真を入れていく。

「せやね。偵察やなかったら、もこもこ羊、もふもふわんこと遊びたかったね」

　本賀（ほんが）の眼鏡の奥の眼が光る。彼女は何としても1回戦に勝って、2回戦で六甲山牧場と戦いたいと思ってきた。

高校名：六甲山牧場高校

レビュー者：火星　円周

投手力：3

打撃力：4

守備力：5

総評：投手はおじぎするボールを投げる。打者の多くはバッドのヘッドが下がっている。守備は私と同じぐらいか、私よりも下手である。

高校名：六甲山牧場高校

レビュー者：本賀　好子

投手力：3

打撃力：6

守備力：6

総評：獣人の選手が多いので、バッティングや守備に光る物があります。特に、ボーダーコリーのキャプテンはとても熱血で、パワーがあるので要注意です。馬の女性がエースのようですが、ボールの威力は今一つです。でも、本番では凄いキレのある球を投げるかもしれません。

（夏大予選まであと12日）