伊能君の友達
第65話
伊能君はホッとため息を吐いて、自室で赤く染まり始めた空に目を向けた。
「お友達が来てくれたわよ」
母親が、ドアをノックして声をかけた。
「お友達?」
「十朱君ていう……なんか優しそうでカッコ良い子」
伊能君がドアを開けると、母親が嬉しそうに立って言った。
「カッコ良いかなぁ?」
「カッコ良いよ、今風の草食男子的な?」
「あれで意外と手が早いかもよ」
「えー?マジで?」
母親は明るく言ったが、友達の少ない伊能君に、謹慎処分で家に居る時に、様子を見に来てくれるお友達ができた事に、ホッと喜びを覚えているのは、手に取るように分かる事だ。
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