第567話 多国間同盟
ニルヴァナに集まった国家は62か国、ほとんどが小国で戦力としては微々たるものだが、集まればそれなりの力にはなる。それを理解している各国首脳は、エリシア帝国やラドル枢軸連合の脅威に対して、迷いなく多国間同盟の結成を選択した。
結成前に話し合いの場は作られたが、形式だけのもので、すぐに調印式へと進む。
「正式な調印が終わったら、マスコミを呼んで盛大にお披露目をするぞ」
「なるほどね、ジャン、あんた最初からそのつもりでマスコミにリークしたんだね」
アリュナの指摘に不敵な笑みを浮かべてジャンはこう言い切る。
「当たり前だ。せっかく軍事同盟を組んでも、それを知らしめなきゃ抑止力にもなりゃしない」
ジャンの計算高さにはいつも感心する。おそらく転んでもただでは起きないんだろうな。
新たに誕生した軍事同盟の名は、調印式の行われた地の名から、ニルヴァナ同盟と
名称された。予想される同盟の軍事規模は魔導機40万機を超え、エリシア帝国やラドル枢軸連合と肩を並べる勢力となった。
おそらく同盟はまだ大きくなると、ジャンは予想する。エリシア帝国やラドル枢軸連合に脅威を持っている国はまだ多くある。そんな国たちがニルヴァナ同盟の事を知れば、後から参加してくることも考えられるそうだ。
そんなニルヴァナ同盟の最大の弱点は、大きな脅威に対抗する為の急ごしらえの組織という点だとジャンは指摘する。それを補うために、各国が資金、人材、資源などを提供して作る、命令系統を統一した軍事組織を作ることを提案した。
無双鉄騎団を信頼している国家ばかり集まっていることもあり、ジャンの提案はすぐに受け入れられた。ジャンの凄いところは、この組織のことを最初から考えていた事で、なんと、すでに組織の詳細を資料にまとめていたのだ。その資料を基に、組織作りは異例の早さで進められる。無双鉄騎団もその組織づくりに協力している為、忙しい日々を過ごすことになったのだけど、その為にオヤジの楽しみにしている宴会は後回しなっていた。
「もう、我慢できん、宴会はまだか!」
どうやらオヤジの我慢が限界にきているようだ。酒は一人で飲んでいるようだけど、やっぱりワイワイと大勢で飲む方が楽しいらしい。
「もう少しで各種調印が全て終わりますのでそれまで待ってください。一区切りした後ならお付き合いしますから」
「ふむ……」
清音はそう言っているが、組織づくりがある程度めどが立ったら、すぐにユキハの救出と英雄を奪還する作戦を進めたいと思っている。それが終わらないと、宴会なんてやっている気分じゃないってのが俺の本音だ。
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