第564話 結社の浮上
英雄とユキハの奪還の為に動き始めたその時、世界に激震が走る大事件が起こった。ラーシア王国、リュベル王国、ヴァルキア帝国などの巨大国家を中心とした37か国の大軍事連合が誕生したと宣言されたのだ。最強の軍事勢力となるのは間違いなく、エリシア帝国との間で、大きな争いが起こるのは間違いないだろう。
「シャングリラ計画が動き出したようですね。実質、この軍事同盟を牛耳っているのは結社です。本格的に結社は世界を動かそうとしているようです」
フィスティナは今回のニュースについてそう説明する。
「なるほどな、こうなってくると英雄の奪還どころかユキハの救出も難しくなってくるな」
ジャンは難しそうな表情でそう言う。俺はちょっと感情的にその言葉に反論する。
「難しくてもやるしかないだろ、ユキハはきっと俺たちが助けにくるのを待ってるぞ」
「ふむ、軍事同盟には軍事同盟か……気は乗らないが、国家の力を借りるしかないかもな」
「どういうことだ?」
「アムリア連邦やメルタリア王国など、今回の軍事同盟に参加していない有力国家はまだたくさんあるってことだ。そんな国々は、今回の軍事同盟には懸念を示しているはずだからな、それを利用するってのも一つの手だ」
「こっちも軍事同盟を作るってことか?」
「そうだ。そうすれば、打てる手の数も多くなるし、結社やエリシア帝国への対抗処置にもなる。というか、おそらく俺たちが望まなくても、すでにアムリア連邦やメルタリア王国ではその議論が上がってるはずだ」
「でも、戦争が大きくなりそうだよね、そうなったらいっぱい人が死んじゃう」
ファルマがボソッと現実を言う。
「犠牲は仕方ないとは言えない。だけどな、それを考えたら何もできなくなる。どっちが正解だったなんて後にならねきゃわからねえし、今は自分が最善だと思う道を行くしかねえ」
ジャンの言葉に俺も同意する。
「そうだな、俺たちが動かなかった方が犠牲が多くなることもあるだろうし、今は今で全力を尽くすしかない」
「そうだよね、変なこと言ってごめん……」
ファルマの反省するようなその言葉にジャンが真顔でこう諭す。
「変な事じゃないぞ、戦いに犠牲があるってことは忘れてはダメだ。それを忘れたら戦争なんてものはただの暴力と変わらない」
ファルマは本質は優しい子だから、やっぱり犠牲になった人のことが気になっているのだろう。ジャンもそれを大事に思っているのか優しく諭したようだ。
「軍事同盟の話を進める為にも、まずは別動隊に連絡して無双鉄騎団を集結させようか、戦力を分散している状態で相手できる敵じゃないようだしな」
俺は話を変えるようにそう提案した。
「そうだな、剣術指南殿やリンネカルロの意見も聞く必要もあるだろうしな、勇太にしてはまともな意見だ」
「勇太にしては、はよけいだ」
英雄の奪還やユキハの救出には高いハードルがあるかもしれないが、無双鉄騎団が全員集まればどうにかなる。そう思っているのは俺だけじゃないようで、その場にいる仲間で、暗い顔している者は一人もいなかった。
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