第551話 真紅の実力/ユキハ
多くの真紅の機兵は遺跡内へと入っていたが、敵の襲撃を想定して、フィストアさんは五機の護衛の魔導機を残してくれていた。ミスモロフの襲撃を受けて、すぐにその護衛の真紅の魔導機が反応する。
「私も出撃します! すぐに用意して!」
「ちょっと待てユキハ、真紅の機兵の魔導機が動いてくれている。ここは任せていいんじゃないか」
私の身を案じたのか、父が珍しく発言する。
「いえ、無理を言って護衛をお願いしている身で、何もしないで任せっきりにはできません。せめて援護の一つでもしないと、誠意を見せることもできません」
「しかしな……」
「少し前に比べれば、私も随分と成長しています。援護に徹すれば、それほどの危険はありません」
無双鉄騎団から伝授された鍛錬技術により、私のルーディア値も飛躍的にアップしている。並みのライダーなら負けはしない。
心配する父を言い負かすと、私はラスベラmk2に乗り込む。この機体はアムリア連邦軍の量産機に独自のカスタマイズを施した新しい愛機で、高い戦闘力を誇る。
「こちらアムリア王国所属のラスベラmk2、微力ながら援護いたします!」
敵を迎え撃つ為に戦闘態勢に入った真紅の機兵の魔導機に外部出力音でそう宣言する。
「その声はユキハ王女ですか!? いけません、ここは私たちにお任せてお下がりください!」
「問題ございません。今はここにいるのは王族でも王女でもないただのライダー、そう思っていただいて結構です」
「しかし、後で自分が団長に怒られてしまいます」
「フィストアさんには私が話をします。それより敵に備えましょう、もうそこまできていますよ」
敵の接近でうやむやにして戦闘に突入する。襲撃してきた敵機は50機ほどで、圧倒的多数だ。そんな数の劣勢に怯むことない真紅の機兵のライダーたちは、勇敢にも敵軍に向かっていく。
「それではユキハ王女は後方から援護をお願いします。前衛は我々にお任せください」
私を下がらせることを諦めたようで、そう指示してきた。私はそれを了承すると、支援用に持ってきた遠距離武器を構えた。
真紅の機兵の魔導機が、敵軍の攻撃の波をせき止めるように激突する。凄いことに、10倍の数の敵を止めるだけではなく押し返す。さらに押し返しながら、一機、また一機と斬り伏せて敵を削っていく。
少数の敵に、力負けして驚いたのか、敵の隊列が乱れる。バラバラに逃げ惑う敵機に狙いを定めて、無双鉄騎団の技術を使って作られた最新式の武器、魔導小筒を発射する。小筒の先端からバチバチと光る雷光が高速で打ち出され敵機に命中する。あたった機体に雷が移り激しく光ると黒く変色していく。そして人形のように動かなくなると、ピクピクと痙攣させながら倒れた。
威力は凄いけど、この武器には接近した敵には撃てないという弱点がある。その為に敵が近づかれるとどうにもできなくなるのだけど、真紅の機兵の魔導機がうまく動いてくれて、ラスベラmk2に近づくことすら許さない。
それにしてもなんて強さなんだろうか、一人一人の技量も素晴らしいが、連携によりさらに高いパフォーマンスを見せている。もしかしたら集団戦になれば、あの無双鉄騎団より上かもしれない。
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