第547話 手伝い/ユキハ
「ちょっとお姉ちゃん、話聞いてる!?」
何度も声をかけてきていたのだろう、かなりボリュームアップされたヒマリの声で我に返る。
「あっごめん、なんだっけ?」
「もう……真紅の機兵さんから食料などの物資を分けてもらったから、みんなに配分する話の途中でしょ!」
「そうだったわね。それじゃまずは半分を均等に分けましょう。どれくらいのここに滞在しないといけないかわからないので、もう半分は残しておいた方がいいわね」
「それだよ、それ! いったいいつまでここにいないといけないの?」
「真紅の機兵が任務を終えるまでよ」
「それがいつ終わるのか知りたいの!」
「わからないわよ……どんな任務かも知らないから予想もできないわ」
「ちょっとは話を聞けないの?」
「無理よ、極秘の任務みたいだし」
「それじゃせめてあの人たちのお仕事の手伝いとかできないかな……早く終わらせて国に帰りたいよ~」
何気なく言ったヒマリの言葉だけど、悪くない案だと思ってしまった。極秘の依頼なので出来ることは限られるとは思うけど、何か手伝えないか話を聞くだけでも聞いてみることにした。
そして、ダメもとの提案だったけど、意外にもそれならばと手伝いをお願いされた。手伝いの内容は、見たこともない計器の計測の手伝いで、確かに人手はいくらあっても足りないくらいに忙しそうだった。
「すみません、お言葉に甘えさせて頂きまして」
フィストアさんは申し訳なさそうに私にそう言う。
「いえ、こちらから申し出たことですし、何かやっていないと落ち着かない性格ですから」
「正直言いますと、まさか、王族の貴方が手伝いにくるとは思って無かったものですから」
私がアムリア王国の王女であることは伝えていた。手伝いの話になった時、フィストアさんは従者か誰か下の者をよこすものだと思っていたようだ。
「それにしても凄い機械ですね、いったい何を計測しているのですか」
「特殊な磁場を調べているのです。あるものを探しているのですが、なかなかヒントが少なく、無数にある微弱な周波数を拾って分析して見つけようとしているんです」
大事な依頼内容は伏せているが、なるべくわかるように私に説明してくれた。何かを探しているということはわかったけど、こんな不毛な場所で何を探しているのだろうか……。
「ユキハ王女は、魔導機に乗ったりするのですか」
計器の数値をメモしている時、不意にフィストアさんにそう聞かれた。
「はい、ライダーも少ない小国ですから、幼い頃から乗っています。それより、どう
してそう思ったのですか?」
「機器の扱いに慣れているようでしたので、一般の方では、その形状のハンドルは回し方もわからないものですけど、操作方法を教える前に器用に回して調整していたのでそう思いました。普段から使ってないとそうはできないものですよ」
そう指摘されて、どうしてかとても恥ずかしくなった。鏡を見たわけではないけど、多分顔は真っ赤になっていると思う。
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