第543話 重要な情報

ラネルの手腕は凄かった。通信と無数の命令書を使って国内の混乱を次々と収めていく。さらに同時に国防力の回復にも着手して、俺たちもその手伝いをしていた。


順調に進む復興の中、ラネルが知りたかった情報が彼女の元に唐突に舞い込んだ。それはもぬけの殻になっていたラネルの母国の人たちがどうやら生きているという情報だった。


「やっぱりアムリア王国の人たちは生きているのね!」

渚の知り合いも沢山いるようで、嬉しそうにそう言う。ラネルも大統領の顔を一時休業して純粋に喜んでいるようだ。

「うん、まだ情報の信ぴょう性はわからないけど、その可能性は高いみたい」


しかし、そんな喜ぶ二人と違い、ジャンはその情報を聞いて現実的な意見を言った。

「喜んでるとこ悪いけどよ、アムリア王国の人たちは国外にまで逃げてるみたいなんだろ? しかも追っているクーデター軍はまだ追跡している可能性が高い。早めに救援にいかないと、取り返しのつかないことになるぞ。しかも話を聞いていると逃げ込んだのはあの辺境のマルヌダーク、いつかは追い詰められて逃げ道はなくなるぞ」


「はい、その通りです。そこで無双鉄騎団に新たな依頼を私個人からさせてください」

ラネルの表情が大統領から一王族の顔に変わった。そして甘えるように俺とジャンを見る。

「個人的な依頼ね、そりゃ断るわけにはいかねえよな勇太」

不意に同意を求めてきたが、もちろん俺の答えも一緒だった。笑顔でラネルに依頼を受けると伝えた。



マルヌダークは南の辺境地域で、昔、巨獣にむちゃくちゃにされて荒廃してしまった区域だそうだ。SSSランク個体の特殊ブレスを受けた大地は、今でも草木も生えない不毛な土地で、人はおろか生息する動物すら少ない。さらに最悪なことに通信も遮断される磁場があるそうで、連絡すらできない。


「アムリア王国の人たちはどうしてそんなところへ逃げ込んだんだろうな」

「単純にそっちにしか逃げ道がなかったんだよ。周りは敵だらけ、どこの国が信用できるかもわからない状況だったからな、誰もいない方角へ逃げるしかなかったんだろうよ」

「なるほど、確かにそう聞くと納得だな」

「それよりできるだけ早くマルヌダークに向かわないとヤバイ、情報ではアムリア王国の人たちを追っているクーデター軍はそれなりの規模はあるそうだ。しかもその司令官の人間性は、あまりよろしくないと評判だそうだ。そんな奴に捕まったらどんな目にあわされるかわかったもんじゃない」


「ラネルの家族は人間性に問題がある司令官に追われてるのか!?」

「そういうことだ。さっさと用意して出発するぞ」


急ぎの準備ではあったが物資の調達は入念におこなわれた。マルヌダークでは補給なんてできないし、もしかしたらアムリア王国の人たちに物資を提供する必要があるかもしれないので、それも計算されていた。

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