第536話 大統領の決意

通信が正常に回復したことで、徐々に連邦内の現状がわかってきた。ラネルは、その情報をもとに、信頼できる人間を集めて今後の動きを相談する為に会議を開いた。そこになぜか俺も呼ばれる。


「どうやらクーデター軍は、連邦内のどこかの国家が主導しているわけではなく、一部の上位階級の人間が主導して起こしているようだな」

ジャンが現状を分析してそう結論付けた。


「個人的な動きにしては組織的すぎないか?」

俺の問いに、ジャンは何かを知っているようにこう言う。

「そりゃそうだ、動いているのは個人でも、裏には大きな組織が絡んでいるからな」

「組織って、大国相手にそんな大それたことできるような組織なんてあるのかよ」

「大国どころか、その組織は世界を相手に何かをしようとしている。今までは陰に隠れて暗躍していたようだが、陽の光が恋しくなったのか暗闇から這い出てきたようだな」

「あれかい、その組織って前に話していた結社の……」

何かを思い出したようにアリュナがそう言うと、ジャンは真剣な表情で応える。

「証拠があるわけではないがな、俺は、今大陸中で起こっている騒動の裏では、結社ラフシャルが動いていると思っている」

確信はないとか言ってるが、ジャンが根拠もなくそんな事を考えるわけはない。かなりの確信があってそう思っているようだ。


「結社ラフシャルとは初めて聞くものですが、どのような組織なのですか?」

始めて聞く話に、国家元首の立場であるラネルは興味があるようで、そう聞く。

「結社ラフシャルにはもう一つ別の名前がある。そちらはラネルも良く知っている名だよ」

「もう一つ別の名?」


「そう、結社ラフシャル、その表の顔は大陸中に影響力のある巨大組織、ラドルカンパニーだ」

「えっ! そ、それは本当なのですか!? ラドルカンパニーと言えば、資本主義を理念に持つ営利組織ですよ。そんな組織がクーデターなんて、経済を壊すよな真似をしますか!?」

「いや、だから証拠はない。だが、確信はある。いくつかの事実を繋ぎ合わせていくとそれしか考えられない」

「そうですか、ジャンさんが言うのなら間違いないのでしょうが……わかりました。もし、本当にラドルカンパニーが世界の秩序を破壊するような行為をしているのなら、アムリア連邦大統領として私は、その勢力と全力で戦う事をここに誓います」


ラネルは固い意志を隠すこともなく力強くそう宣言した。


「剣術指南殿やリンネカルロたちと戦っている勢力もおそらく結社ラフシャルに操られた者たちだろう。それだけ手広く動いているなら必ず証拠が出てくるはずだ。そいつを手に入れれば全世界に知らしめて、追い詰めていくこともできるだろう」


確かに証拠も無いのに、突拍子もない話だけに世界に訴えかけても誰も信じて貰えないだろう。ここは面倒でも一つ一つ証拠を集めて対抗していくしかない。

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