第530話 降伏
数だけならこちらを上回っていたクーデター軍だが、ヤマトの主砲にビビり、もはや烏合の衆に過ぎなかった。純粋にラネルの為に集まった勢力も戦闘に加わり、戦況は一方的な展開となっていた。特に無双鉄騎団の魔導機隊の力は次元が違い、ナナミや渚なんかは、近づくだけで敵が逃げていくまで恐怖をばらまき圧倒していた。
そんな一方的な展開、もはや勝負はついた頃合いにラネルがヤマトの拡声外部出力音で呼びかけを始めた。
「この場にいる全ての人々に伝えます。私はアムリア連邦初代大統領のラネルです。聞いてください! どのような理由で、同じ国の者同士が戦わなければいけないのでしょうか! この戦いに何の意味があるのでしょうか! 国の為でもなく、主義主張を通す為でもない。ましてや、家族を守る為の戦いでもないこんな戦いはすぐに止めるべきです。自分の判断で行動してください。もう上官の命令に従う必要はありません。降伏する者は罰しないと、大統領としてここに約束します」
ラネルの言葉がダメ押しとなり、劣勢だったクーデター軍に変化が訪れる。白旗をあげ、降伏する者が続々と現れ始めた。そしてその波はクーデター軍、全体に広がり、全軍の降伏へ相成った。
「一応は終わったな」
ジャンが戦後処理をする情景を見ながら呟く。
「一応ってどういうことだ?」
「ここにきたクーデター軍は、全体のほんの一部だってことだ。この場では収まったけど、連邦国内はまだまだ絶賛混乱中だ」
「確かにそうかもしれません。通信障害で状況はわかりませんけど……」
不安そうにラネルが言うと、ジャンがそれで考えが浮かんだのかこう提案する。
「そうだな、混乱を静めるにしても、通信環境が復旧しなきゃ始まらないかもな、まずは通信妨害をどうにかするか」
「どうにかできるのか?」
「ラフシャルの話だと、妨害している装置がどこかにあるそうだ。それを破壊すれば通信妨害はなくなるだろ」
「どこにあるのかわかるのか?」
「大丈夫、こちらには立派な情報源があるだろ」
「ああ~ あの王さまか」
ハリソン王なら何かしらの情報を持っている可能性は高い。しかも完全にジャンにビビっているので簡単に喋ってくれそうだ。
結果、ハリソン王の情報から、通信妨害をしている装置は連邦中央部の国、神聖国テミラに設置されていることがわかった。しかし、そこが重要地点であることはクーデター軍ももちろんわかっていることで、大部隊が防衛しているそうだ。
「こちらの戦力は降伏してきた部隊も吸収して、魔導機1000機程度にはなっている。しかし、情報源の話では防衛している部隊はこちらの倍はいるそうだ」
「倍くらいならどうにかなるんじゃないか?」
さっきの戦いの感じであればなんとかなると思ってそう言ったのだけど、ジャンにお前は考えが浅いと怒られた。
「さっきのラネルの呼びかけを聞いてなかったのか? クーデター軍と言っても同じ連邦軍だぞ、なるべく潰し合いは避けるべきだ」
「それじゃ、どうするんだ」
「目的は通信妨害している装置の破壊だ。全面衝突する必要はないだろ」
「あっ、なるほど、そうか少数で潜入して装置を破壊して逃げてくればいいんだ」
「そう言う事だ。こんな時、隠密行動に適したエミナのアルテミスがあればよかったんだがな、まあ、ちょっと乱暴になるが、今回は勇太と渚コンビで強行突破作戦でいこう」
俺と渚では隠密行動ができないと判断しているのは正しいけど、なんか見透かされてるようで腹が立った。
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