第514話 信頼/ラネル
エモウ王の助言通り、ここは無双鉄騎団に頼るのが良いと思う。すぐに連絡を入れようとしたのだが、意外な人物にそれを阻止された。
「何をするのですか!」
長距離通信用の言霊箱が、衛兵の一人に破壊された。何が起こったのか理解できずに怒りの抗議をあげることしかできなかった。
「大統領閣下、残念ですがあなたの夢物語はここで終わりを迎えます」
まさか大統領護衛隊に刺客が紛れ込んでいるとは……刺客はぎらつく剣を手に持ち、こちらに近づいてくる。他の衛兵に助けを求めようと周りを見渡すが、なぜか一人も見当たらない。
私は走って通信室から逃げ出した。刺客がすぐに追いかけてくるかと思ったのだけど、なぜかその様子はない。しかし、その理由はすぐにわかった。通信室を出ると、剣を構えた衛兵たちが待ち構えていたのだ。どうやら刺客は一人ではなかったようだ。
ここまでか……諦めが頭をよぎった時、私を呼ぶ声が聞こえた。
「大統領! ご無事ですか!!」
そう叫びながら十人ほどの兵士が乱入してきた。彼らは私を守るように布陣すると、刺客たちと対峙する。
「あなたたちは!?」
「私たちは元エモウ王国の近衛隊員です、エモウ王より至急の命があり参上しました!」
なんとエモウ王は私の為に手を回してくれていたようだ。自分の身の安全より、私の事を優先してくれたことに胸が熱くなる。
すぐに刺客とエモウ兵が戦闘になる。その間に、私は数人の兵に守られ、その場から離れた。
「西の大門に旧エモウ軍の魔導機部隊を集めています。そこまで急ぎましょう」
まずは身の安全を確保することが大事だろう。その後は信用できる人たちに連絡して体勢を立て直し、この混乱を収めるように動くつもりだ。
大統領府は想像以上に大混乱に陥っていた。誰が敵で誰が味方かわからない状況で、少し前まで味方だった者同士が戦っている。旧エモウ軍の隊長はここで起こっているような事が連邦中で起こっていると説明してくれる。アムリア王国は大丈夫だろうか、お父さんやユキハやヒマリは無事だろうか……急に心配になってきた。
西の大門前には一個大隊ほどの部隊が私の事を待っていてくれていた。私と旧エモウ兵が逃げてくるのを見つけて、すぐに魔導機隊が駆けつけてくれる。それを見た追手たちは、さすがに勝てないと悟ったのか逃げていった。
部隊と合流すると、すぐに大型のライドキャリアに案内された。この艦には見覚えがある。確かエモウ王家所有のエチゴという名の艦だったはずだ。
「これより、エモウ王の命により、エモウ王国軍はラネル大統領閣下の直属部隊として行動いたします。なんなりとご命令ください」
エチゴの艦長はそう宣言すると深く頭を下げた。
「ありがとう。それでは早速だけど、アムリア王国と無双鉄騎団に連絡を取りたいです、お願いできますか」
「はっ! すぐに手配します。ただ、この場にクーデターの軍が接近しているという情報が入ってきております。この場から早急に離れたいのですがよろしいでしょうか」
「わかりました。それではすぐにアムリア王国へと向かってください」
誰が味方で誰が敵かわからない状況でも、間違いなく頼りになるのは家族だろう。
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