第510話 優勝賞品
歓迎会祭りは大盛況で終わりを迎えた。市民も無双鉄騎団の人間もみんな楽しかったようで、終了後も祭りでの出来事をネタに、宴会などがおこなわれてまだまだ盛り上がっていた。
「そういやラフシャル、あの美女コンテストの優勝賞品ってなんだったんだ?」
ふと気になって、生煮えの魚を叩いて潰した、ちょっと見た目がアレな郷土料理を肴に晩酌していたラフシャルに聞く。
「大量のレアメタルと希少素材をおねだりしてみた。これでみんなの魔導機をもっとパワーアップできると思うよ」
「レアメタル? 希少素材? もしかしてだけど、優勝賞品って個々で違ったのか?」
アリュナや清音がレアメタルなんか欲しがるわけないので、疑問に思って質問した。するとそのタイミングで食堂に入ってきたジャンが、ラフシャルの代わりに答える。
「その通りだ。欲しがるモノは人それぞれ違うからな、一番有用で喜ばれる賞品は優勝者に決めさせるのが一番だろう。それにしても、よりによって一番金のかかるラフシャルが優勝するとは……おかげで備蓄していた資金が吹っ飛びそうだ」
「ちなみに他の参加者は何を欲しがってたんだ?」
そう言う話をきくと他のみんなは何を欲しがったのか気になった。
「アリュナはお前と一週間のデート旅行で、エミナは借金の全額免除と給与アップ、清音はレアな業物の刀、あとは……」
何と言うか欲しがるものってこんなに個性がでるもんなんだなあとあらためて思う。それにしてもアリュナの俺との一週間のデート旅行ってなんなんだ? いつも一緒に色んな所を旅しているから年中旅行中みたいなもんだろうに……わざわざ優勝賞品にする理由がわからなかった。
「それにしても審査員は見る目がなさすぎですわよ、よりによって男性のラフシャルが優勝だなんて」
「そうだな、この私の健康美を理解しないなんてどうかしてる」
「アリュナは露出が多すぎて下品なだけでしたから当然ですわ」
「そういう王女さまも随分と危ない水着を着てたじゃないの、品性があるとは言えないんじゃないのかい」
「あの水着はメルタリア王都の高名なデザイナーの作品ですわ! 芸術性で勝負しただけですわよ!」
「どこが芸術よ、ただ胸と尻を強調しているだけじゃないの」
「まあ、尻だなんて言い方、下品ですわよ!」
「尻は尻だろ? 他になんて言うんだい」
「お尻ですわ!」
「’お’を付ければなんでも上品になると思ってるのかい」
「思ってますわ!!」
アリュナとリンネカルロのなんとも不毛な言い合いが始まったので、巻き込まれないうちに少し食堂から離れる。甲板でも行こうかと移動していると、後ろからフィスティナに話しかけられた。
「あら、勇太さん、どこへいくんですか」
「ああ、フィスティナか、ちょっと風にでもあたろうかと思って甲板に出ようかと」
「良いですね、私もご一緒してよいですか?」
断る理由もないので了承すると、一歩下がった距離感を保ちながらついてくる。歩きながら、ふと美女コンテストのフィスティナを思い出す。あんな美人さんと二人で歩いていると考えると、なんだか恥ずかしくなり顔が熱くなった。たぶん顔が赤くなっていると思うので、彼女に見られないように歩みを少し早くしていた。
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