第491話 帰艦
無双鉄騎団がメルタリアに集まる間で、人員の募集をしたのだけど、予想していなかったような反響があったようだ。すでに多くの人が募集に集まっていると、メルタリアで俺たちの到着を待っているアリュナから連絡があった。
「そもそも求人を出すのに、アリス大修道院の情報網を使ったのがいけないんじゃないのかい? もうすでに500人近い人が集まってて、対応が間にあわやしないよ」
「そんなに集まってるのか!?」
予想以上の人数に俺も驚く。
「そもそもジャンは何してるんだい! ダーランからメルタリアに戻るだけでどうしてそんなに時間がかかるんだい! 早くこっちへきて、事務処理を手伝って貰わないとパンクしちまうよ」
アリュナは求人に集まってきた人たちの対応で忙しいこともありちょっとイライラしたようにそう言う。
俺たちは登用した剣闘士たちを連れてメルタリアに向かっていることもあり時間がかかるのはわかるが、確かにジャンたちはもうすでにメルタリアに到着していてもおかしくない。もしかして何かあったのかな……。
しかし、ジャンの遅れの原因はもっと単純なことであった。心配で確認したところ、こう答えが返って来た。
「これから十分な資金が必要になるからな、その工面の準備をしていただけだ」
「おっ、それで資金はなんとかなりそうなのか?」
「当面は大丈夫だ。西南諸国の複数の国家から金を引っ張り出せそうだ」
何をどうやったら国家から資金を調達できるのか想像もできないが、それを簡単にやってしまうところがジャンの凄いところだよな。
俺たちがメルタリアに到着した頃には、無双鉄騎団は大所帯になっていた。すでにフガクに収容することができなくなっていて、その周りには仮設テントが無数に立てられていた。
「こりゃ、大変だな……」
「ナナミたちの部屋大丈夫かな、誰かに取られてないかな」
「さすがにそれは大丈夫だと思うけど……」
フガクに出入りする大勢の人を見て、ナナミが心配そうに言う。ファルマも大丈夫だと思うと言うが、表情はちょっとこわばっていた。
そんな心配をしながらフガクに入ると、忙しそうに動き回っている仲間たちと再会する。久しぶりの再会を歓迎してくれると思ったのだが、歓迎されたのは一人だけだった。
「エミナ!! よかった、ちょっと事務処理を手伝っておくれ! 勇太、ナナミ、ファルマは悪いけど適当にロルゴたちと遊んでいてくれるかい」
確かにこの状況で俺やナナミの出番はないだろう。邪魔にならないようにロルゴたちが待機しているライダー控室へと向かった。
「お兄ちゃんだ!! お帰り、お兄ちゃん!」
俺を見つけたマウユが嬉しそうに抱き着いてくる。心は幼いマウユだが完全に成人女性である。濃厚な抱擁は未成年男性の俺には刺激が強すぎる。
「ちょっとマウユ、あまり勇太とベタベタしないでよ!」
俺がマウユを止める前に、ナナミが不機嫌な顔で注意する。
「えっ!? どうして?」
「どうしてって……どうしてもよ!」
特に理由がなかったようで、ナナミは返事に困ったのだが、マウユもナナミに注意されたことを気にしたのか、ゆっくりと俺から離れた。
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