第465話 かたき討ち

エリシア帝国軍が撤退を始めたので、デアグラフル侯爵が逃げるんじゃないかと心配になったけど、どういうわけかデアグラフル侯爵軍だけはこちらに向かってきていた。しかも行軍は雑で、気でも狂ったかと思うほど不自然な動きだ。まあ、こちらとしては都合がいいだけなので問題ないけど。


「ナナミ急ぐぞ、ファルマの我慢も限界だろうからな」

「うん、わかってる」


あの強敵を叩いた後、エリシア帝国軍の動きが大きく変化した。戦闘の継続をあきらめ撤退しはじめた。その為、峠の守りを手薄にしても問題ないだろうと、ナナミも同行してファルマたちのもとへと向かっていた。


ヴァジュラ改は飛行できないこともあり地上を移動して向かう。アルレオ弐ならヴァジュラ改を抱えて飛ぶこともできるけど、本格的にエーテルの残量などが危なくなってきていたこともあり無理しない選択をした。現在のアルレオ弐は本来の実力の十分の一も発揮できないかもしれない。


デアグラフル侯爵軍に近づくと、ファルマがこちらに気がついた。


「勇太! ナナミ!」

「ファルマ、待たせたな」

「ファルマ、一緒にデアグラフル侯爵をぶっ飛ばそう!」


俺とナナミがそう声をかけると、ファルマは力強く返事をする。

「うん! もう絶対に逃がさない」


さて、デアグラフル侯爵を倒すとしても、どうやるか考える。ライドキャリアごと破壊してしまったら本当にデアグラフル侯爵を倒したかわからなくなる可能性もあるし、やはり一度拘束するのが一番だろう。


「よし、それじゃはじめよう。俺とナナミで敵魔導機を叩くので、エミナは逃げられないようにデアグラフル侯爵のライドキャリアを動けなくしてくれ。ファルマは上空から砲門や敵機を狙って援護を頼む」


「わかったよ」

「了解~」

「はい」


俺たちはすぐに動いた。撤退中なの大丈夫だと思うけど、他のエリシア帝国軍にも警戒しながら攻撃を仕掛ける。


しかし、気合を入れて攻撃を開始したけど、想像以上にデアグラフル侯爵軍の戦意は低かった。俺とナナミで数機の魔導機を倒しただけなのに、完全にビビったようで散り尻に逃げ始めた。


瞬く間にデアグラフル侯爵のライドキャリアを守る兵はいなくなり完全に孤立する。デアグラフル侯爵も逃げようとしたが、エミナが動力を破壊したことで動けなくなりその場で停止した。


「ファルマ、ブリッジをアローで狙ってくれ。だけど撃っちゃダメだからな」


ファルマはデアグラフル侯爵のライドキャリアの正面で浮遊しながらアローを構え、ブリッジに照準を合わせる。巨大なアローに狙われたブリッジ内は恐怖でパニック状態になる。


そんな混乱しているデアグラフル侯爵のライドキャリアに外部出力音で話しかけた。

「デアグラフル侯爵のライドキャリアだな。デアグラフル侯爵個人に用がある。大人しく出てくれば他の者には危害を加えない」


他の者には危害を加えないという言葉が効いたようで、しばらくすると裕福そうな服装をした、太った一人の初老の男が複数の男に連行される格好で姿を現した。

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