第459話 魔覚醒/クルス
派手なのは外見だけで、やはり大したことは無い。いくら丈夫な装甲を持っているとしても、このまま攻撃を続ければやがて破壊できるだろう。
この金色の魔導機を倒せば、残る脅威は飛行している魔導機くらいだろう。もう勝利は目の前にある。そう確信したその時、ドミニオンが何かの反応をとらえたようで、けたましく警告音を鳴り響かせた。
「なんなの!? 何が起こったの?」
レイナのアフロディテでも同じことが起こったようで、通信で知らせてくる。
「クルス指令! アフロディテが異常な反応を感知したようです。管理プログラムが警告音で知らせてますけど……これって確か、魔覚醒の承認プロセスの一つでしたよね?」
十軍神の機体には危険を検知する機能があると話は聞いていた。それは圧倒的力量の相手を察知するもので、勝ち目のない戦いを知らせるものだった。
ありえない……何に反応していると言うの? その疑問は金色の魔導機に起こった変化に教えられる。
金色の魔導機を攻撃していた親衛隊の魔導機が消し飛んだ。実際は粉々に破壊されて吹き飛ばされたのだが、消えたように見える。
さらに、今までこんな動きなど見たことのない速さで金色の魔導機が動いた。あまりの動きの速さに驚き唖然としている間に、次々と親衛隊機が破壊される。
ようやく冷静になったのかレイナが動いた。アフロディテのスリムな機体に似つかわしくない大きな鎌で、金色の魔導機に渾身の攻撃を放つ。並みの魔導機相手なら瞬殺となるであろう速度と威力の攻撃を金色の魔導機は軽く避けた。さらに無意識にアフロディテの動きに合わせて放った私の攻撃を受け止める。
まずい! そう思ったが遅かった。アフロディテは蹴り飛ばされ、大きく後方に吹き飛び、ドミニオンはシールドで叩かれ地面に転がされた。
「そんなまさか! 何が起こってるの!?」
私の驚きの声にレイナが答える。
「くっ……この状況で考えられる可能性は一つ……この金色の魔導機も魔覚醒を使えるということね」
信じられないことだけど、レイナの言う事はあっているように思えた。実際に使用したことはないが、金色の魔導機の変化はラフシャルに聞いていた魔覚醒の内容と酷似する。
「どうするのですかクルス指令……このままでは二人ともやられてしまいますよ」
それは私たちも魔覚醒するのかとの問いだ。確かに魔覚醒した魔導機相手では素の状態では勝ち目はない。しかし、魔覚醒の対価、代償の大きさに即決はできなかった──
魔覚醒はライダーの寿命を食らって発動する。そう言うラフシャルの顔は少し笑っていた。寿命を食らうということは、大事な命を削るということだ。他人事だと言っても笑いながら説明することではないだろう。私は腹を立てて、寿命を食らうシステムに対して抗議した。しかし、ラフシャルはさらに笑みを強めてこう言い放つ。
──自分より強い相手にその場で殺されるくらいなら、寿命を食らわしても勝利して生きながらえた方が遥かに良いではないか──
確かにそれも一理ある。使う使わないの選択権が自分にあるのならかまわないだろうと安易に納得した。
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