第451話 大地の鎮魂曲/ナナミ

勇太から情報のあった敵の部隊が見えてきた。ピンク主体で派手な見た目の魔導機を先頭にこっちに向かっている。確かにさっきまで攻めてきていた敵とは様子が違って、すっごく強そうだった。


「あの敵はヴァジュラ改が抑えるから、アローで援護してください」


乱戦になると戦いにいくと思い、周りの味方に少し下がって援護に専念してもらうよにお願いする。ここまでの戦いでナナミのことを認めてくれているのか、みんな素直に指示に従ってくれるよう。


近づいて分かったのだけどピンクの魔導機の動きは想像以上に早い。間合いに入ったと思った瞬間、すでに目の前にいて大きな鎌のような武器を振り上げていた。


咄嗟にシールドを構えて防御姿勢をとる。バチッと激しい音が響いてシールドを持つ左腕に衝撃が走る。軽い見た目の鎌の攻撃とは思えないほどの重たい一撃だった。まともに受けたらいくら防御力の凄いヴァジュラ改でもちょっと耐えれるか不安になる。


さらにピンクの魔導機以外の敵機もヴァジュラ改に群がってくるように襲い掛かって来た。ピンクほどの速さではないけど油断できないほどの剣速で、避けるのは難しくて全ての攻撃をシールドで弾き返した。通常の敵よりは強い攻撃だったけど、恐れる必要がないと感じた。やっぱり注意するのはピンクの魔導機だ。あの鎌の攻撃は受けちゃいけない。


敵の攻撃をシールドで防ぎながら反撃に移る。正面から剣で斬りかかってきた敵の攻撃を弾き返してバランスを崩すと、無防備になった腹をガイアラブリュスで薙ぎ払う。衝撃波だけでも魔導機を破壊できる威力を持つガイアラブリュスの攻撃が直撃した敵機は、無残にもバラバラに吹き飛んだ。


その一撃から雰囲気が一変した。イケイケで攻勢に出ていた敵の部隊だけど、急に慎重になる。ヴァジュラ改から少し距離を置いて取り囲んで攻撃の隙を狙う。


敵とヴァジュラ改に距離ができたことにより、味方からの援護が始まった。敵に向かって一斉にアローが放たれる。そのアロー攻撃は簡単に弾き返されたが、ナナミにとっては凄く助かる援護だった。援護によりできた小さな隙をついて大技の準備をする。よく理解はしていないけど、自動詠唱プログラムというのを発動させる。これの完了には五秒ほど時間がかかるので乱戦時などでは使うのは難しいけど、完了すればびっくりするほど強力な技が使えるようになる。


「自動詠唱開始します── ルーディアコアにアクセス開始── スペル『パワーリフト』詠唱開始── スペル『デモリッション』連結詠唱開始── スペル『クエイク』同時詠唱開始── スペル『グラビティ』連結同時詠唱開始── 全ての自動詠唱が完了、SS級魔導撃準備完了しました」


フェリに似た音声アナウンスが準備完了を知らせてくれる。それを聞いて、すぐに魔導撃を繰り出した。


「アースレクイエム!!」


そう叫びながらガイアラブリュスを大地に打ち付けた。ラフシャル式音声認識により隠しコマンドが発動される。地に刺さったガイアラブリュスから扇状に大地を陥没させるほどの衝撃波が広がる。それに巻き込まれた敵機は押しつぶされて、無残に破壊されていく。


ピンクの魔導機は危険を察知したのか高くジャンプして回避したが、残りの敵機は逃げることも避けることもできず、良くて大破と、その部隊をほぼ殲滅させた。

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