第446話 ヴァジュラ改/ナナミ

ガルーダⅡのアローレインも凄いけど、やっぱり四元素砲は凄いな。


勇太とファルマの派手な攻撃は、味方の士気を一気に引き上げた。テンションの高まりを表現しているのか、周りの魔導機のライダーたちは外部出力音で、よくわからない言葉を大きな声で叫んでいる。大勢が同じように叫んでいるので、その音量は地響きを起こすほどだった。


「ナナミ、耳が痛いよ……」

「我慢しなさい。士気の向上は戦闘力に直結するのよ。気合入ったみたいだから頼もしいと思うくらいじゃないとダメよ」


頼もしいと思っても耳が痛いのは治らない。だけど、そんなわがままを言っていられないような状況ではなくなった。勇太とファルマに痛めつけられた敵軍が、体勢を立て直して進軍してきたのだ。


しかも四元素砲を撃った後はこっちに合流する予定の勇太とファルマが戻ってこない。上空の様子をスクリーンで確認すると、アルレオ弐とガルーダⅡに空を飛んだ敵がいっぱい近づいていた。


「エミナ! 敵にも飛べるのがいるよ!」

「私も確認したわ。しかも戦術展開できる数を用意しているなんて厄介よ」

「勇太たち大丈夫かな……」

「そうね、だけどあの勇太だから、きっと大丈夫。ファルマもかなりパワーアップしてるし、二人なら切り抜けられるわ。それより地上の方が心配よ。勇太とファルマが合流しないとなると、少し計算が狂ってくる」

「そうだよね、ナナミたちが頑張らないとダメだよね」

「私も敵陣に潜入しながら、厄介そうな敵を暗殺していくつもりだけど、ごめん、やっぱりナナミの負担は大きくなると思う」

「大丈夫だよ、ナナミも凄くパワーアップしてるんだから」


ナナミの魔導機、ヴァジュラはもはや別物ってくらいに強化されていた。鍛錬によりルーディア値が50万を超えたので、それに合わせてラフシャルが高いルーディア値を生かせるように改造してくれていた。


強力な武装だけではなく、防御力、耐久度も大幅に強化されているので、ちょっとやそっとの攻撃にはびくともしない。だから凄い数の敵がこちらに向かってきても恐怖は感じていなかった。


敵の前衛部隊が私たちの布陣する峠の入り口に殺到してきた。そして複数の敵ライドキャリアから艦砲射撃が放たれる。その砲撃音が戦闘開始の合図となり、戦闘が始まった。


敵の艦砲射撃は強力だけど、守りを固める為に用意した防壁が役に立っていた。防壁と言っても大破して使えなくなったライドキャリアの部品を並べただけのものだけど、見た目に反して頑張ってくれている。


エミナは戦闘が始まったどさくさに紛れてステルス機能を使い、敵陣への侵入を開始した。ナナミは、最前線に立って峠を登ろうとしてくる敵の魔導機を迎え撃つ。


隊列を組んで複数の敵の魔導機が、立ちふさがる私のヴァジュラ改に向かって長い槍で攻撃してきた。それを左手に持った大盾で防ぐ。敵の槍は鈍い金属音を響かせて全て弾かれた。勢いよく攻撃してきていた分、跳ね返された反動は大きく後ろにのけぞるように下がった。それを追撃するように大きく踏み込んで右手に持った新武器、ガイアラブリュスを振るった。


魔導撃の追撃効果を持つ両刃の斧は、十歩先にいる全ての敵の魔導機を粉砕しながら、さらに大地を揺るがす衝撃波を放つ。衝撃波は敵軍のかなり後方まで伝わっていき、多くの敵機に大きなダメージを与えた。

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