第444話 大打撃/クルス
シールドのおかげで、強力な魔導撃の攻撃に対して被害は最小限に抑えらえた。あんな攻撃が敵にあるなど予想だにしていなかったので少し焦りはしたが、それも乗り切ることができて安堵した。
「クルス司令官! さらに強力な魔導撃反応です! もう一度攻撃がきます!」
「そんな馬鹿な! 広範囲魔導撃の波状攻撃ですって!!」
我が軍は今、シールド展開からのクールダウンにより無防備になっている。この状態で強力な魔導撃を受ければ多大な被害を受けるのは簡単に想像できる。まさかそれを狙っての波状攻撃なの!? そうだとすれば、敵に対する認識を改め直す必要があるかもしれない。
「全軍、防御態勢! 攻撃に備えよ!!」
無駄だとはわかっていた。あのレベルの攻撃をシールド無しで受ければエクスランダー以下の魔導機は一溜りもないだろう。しかし、ここで指示を出さなければ士気をも失うことになる。
なるべくダメージを抑える為に体を丸くして攻撃に備えたり、うつ伏せになって衝撃を抑えようとする。だが、攻撃を防ぐ正解の態勢などなかった。どのような防御態勢をとっても強力な魔導撃の前では無力であり、想像通りの惨状が我が軍に訪れた。
「被害はどれほどですか!?」
すぐに情報収集士官に確認する。味方のビーコンから被害状況を確認すると、悲痛な表情で答える。
「全軍の二割、少なくても3000機が大破したようです」
「3000……この短時間で……くっ……許さぬ……許しませんよ! 飛竜師団を出撃させて、上空の敵魔導機を片付けるように命じなさい!! 生存した部隊は、すぐに態勢を立て直し、敵軍に向かい進軍しなさい!!」
すでに出撃の準備はできていた飛竜師団は、後方の三隻の空母級ライドキャリアからわらわらと飛び立つ。100名のエクスランダーが高レベルの飛行能力を持った魔導撃に搭乗している部隊だ。いくら強力な魔導撃を扱える敵が相手でも、苦も無く駆除するだろう。問題はあのレベルの機体が、敵にどれくらいいるかということだけど……もし、二桁もいるようなら油断できない。状況によっては不本意だけど、レイナに出撃を要請する必要がでてくるかもしれない。
そう思っている矢先、そのレイナから通信がきた。内容は戦況の確認と、この私を牽制するものだった。レイナは、口調は丁寧だけど明らかにこの私を馬鹿にしている素振りがある。
「クルス指令、味方が随分やられたようだけど大丈夫ですか~? 指揮の経験が豊富でこの軍の司令官になった逸材なんでしょ? あれほどの敵を不用意に接近させたりしたから何か策があるかと思っていたけど、まさかこれほどの被害をだすのも作戦通りなんてことはないですよね~?」
くっ、小娘が……嫌味のレベルだけは高いようね。
「今、上空の敵は排除するように命じました。あれほどの魔導撃を備えているとは予想できませんでした。完全に私のミスです。」
こういう相手にはある程度、本音で話す方が得策であろう。私は変に言い訳をせず、素直に答えた。
「あら、そうなんですか~ 確かに前の戦いではそんな素振りも見せなかった軍ですから仕方ないですよね。わかりました。私もいつでも出撃できる準備をしていますから、困ったら頼りにしてくださいね~」
「ありがとう、そうさせてもらいます……」
むかつく女狸が……隙があればこの私を陥れようとしているのが見え見えだ。
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