第381話 活殺剣
アルレオ弐の頑丈さを信じて、ここは攻撃を受けることにした。それにより、四本腕の意識は完全に俺の方に向いた。
今がチャンスと清音も思ったようで、音もなく素早く近づくと、鋭い剣撃で杖を構えた四本腕の首を飛ばした。
「よし! やった!」
「いえ、まだです! 機能は停止していません!」
フェリの言うように、四本腕は首を飛ばされたのに平気で動いていた。後ろを振り向くと、菊一文字に向かって魔導撃を放った。
「きゃっ!」
首無しが平気で動くとは清音も思って無かったようで、その攻撃をまともに受けてしまう。アルレオ弐と違い菊一文字はそこまで丈夫ではない。胸から肩にかけて装甲が剥がれ落ちるほどのダメージを受けた。
「清音!」
このままでは清音が危ない。俺はしがみつく廃棄魔導機たちを振り払い、四本腕につかみかかった。
すると四本腕は、腕が四本あるメリットを最大限生かし、二本で俺を抑え込み、もう二本でガシガシと攻撃してきた。かなりのパワーだけど、この程度の攻撃ではアルレオ弐はびくともしない。それより破損した菊一文字が心配だ。危ないので下がるように言う。
「いえ、この程度のダメージ問題ありません。もう不覚はとりませんので大丈夫です」
人の心配をよそに、清音はそう言ってさがるのを拒否する。どうやら今の一撃をくらってしまったのが物凄く悔しいようだ。
しかし、清音のそんな変なプライドなどどうでもいい。あの機体の状態でもう一度、四本腕の魔導撃を受ければ致命傷は避けられないだろう。そうさせない為にも、早めにこいつの動きを停止させる必要がある。
「フェリ! 背中にあるそのなんとかってのは前方からも狙えるか?」
「大エレメンタルラインですね。可能です。しかし、大部分はカプセルの後ろにあり、狙うのは大変難しいです」
「難しいのはわかってる。そこを壊せばさすがに停止するよな」
「大エレメンタルラインは、魔導機の神経が集約されているルーディアコアの次に大事な部分です。かなりの確率で停止させることができるでしょう」
「よし! 正確な位置を教えてくれ!」
「はい。前方から狙うなら、カプセルの下部分、できるだけギリギリを貫いて下さい」
「カプセルの下、ギリギリだな」
群がっていた廃棄魔導機たちを強引に振り払うと剣を中段に構える。その動きに四本腕も反応する。しかし、魔導撃のクールタイム中なのか、杖を振り回しながら襲い掛かってくる。
ガツガツと杖で殴られるが、反撃もしないでジッと狙いを定める。ミスは許されない。狙うはカプセル下部ギリギリ……。
「勇太! 危ない!」
敵の動きを見て清音が警告の声をあげる。クールタイムが終わったのか、四本腕は杖で殴るのやめて、魔導撃を放つ仕草を見せた。しかし、この瞬間を俺は待っていた。
「今だ!」
魔導撃を放つ瞬間は動きが止まる。俺はカプセル下部部分に向かって剣を突き刺した。装甲を貫く感触の後、ズズズッと剣は四本腕の胴部を貫き、背中まで到達する。
よし! カプセルは無事だ。問題は四本腕が停止するかどうかである。
しかし、無情にも四本腕は停止していなかった。杖を捨て、突き刺さった剣を抜こうとする仕草をする。
「くそっ! 停止していない!」
そう思ったけど、四本腕の動きはどんどんゆっくりとなってくる。そして最後には完全に停止した。
「勇太。カプセルを取り出してすぐにミライへ戻ってください。魔導機の停止で生命維持装置も停止しています。すぐに医療ポッドに入れないと彼女は死んでしまいます」
「わっ、わかった」
俺は停止した四本腕からカプセルを取り出すと、急いでミライへと向かった。
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