第372話 リフレッシュタイム
改装したばかりの浴室を堪能する為に、女性陣はさっそくお風呂タイムに突入した。覗きを警戒しているのか入り口にでっかく入浴中と書いた立て札を置いて邪魔するなよとアピールする。帯刀して入浴する清音の入っている風呂なんて、怖くて覗くわけがない。さらに今日は渚も一緒だ。全身凶器の渚が制裁に加わるとなると命の保証はないだろう。
大人しくアルレオ弐で待機していると、どこからか通信が入ってきた。出てみると、風呂に入っているはずのリンネカルロからだった。
「勇太。新しいお風呂は最高ですわよ♪」
どうやら風呂場に言霊箱を持ち込んで通信してきたようだ。
「なんだよ。待機中の俺に嫌がらせか?」
「違いますわよ。声だけでも一番風呂を一緒にと思っただけですわよ」
「いや、そんな気遣いいらないから。俺は後でゆっくり入るから気にするな」
「そんなこと言わずに、ほら、みんな楽しそうですわよ」
そう言うと、リンネカルロは喋るのを止めて、周りの音を俺に聞かせているようにした。
「うわ~清音のお尻すっごく綺麗~! 私もこんな感じになりたい!」
今の声は渚だな。清音とは成り行き上一緒に風呂に入ったことあるけど、じっくりお尻を見る暇などはなかったから知らない情報だった。清音ってお尻が綺麗なんだ……清音のお尻丸出し姿を想像したところで頭を振って現実に強制的に戻す。だめだめ、変な想像をしてしまった。
「胸も本当に綺麗~武人特有の引き締まった体しているのに、女性としての美しさは損なわれないよね」
「ちょっと、渚、変なところ触らないでください」
「いいじゃない。同性なんだから」
変なとこってどこだ!! やばい、声だけ聴いてる方が妙な想像してしまうぞ。
「わっ! 医療カプセルにいる時に少し見たけど、ミルティーってやっぱり胸大きいよね!! 着瘦せするタイプなのかな」
ミルティーも湯船へとやってきたようで、それを見た渚がそう声を掛ける。
「はっ、はい! 普段は大きくて邪魔なので、さらしを巻いておさめています!」
「もったいないですわね。それだけのものを持ってるならもっと表に出せばよいですわ」
「いえ、任務には邪魔なだけですので、できれば小さくなりたいくらいです」
「ちょっと! どうしてそんな話になったら私の胸を見るのよ!」
渚が悲痛に叫ぶ。どうやら小さい胸ということで、みんなの視線を集めたようだ。確かに渚の胸は同情を集めるほど貧そだ。
「まあ、それはねえ……」
「比較対象と言いますか、あれですわ。ビフォーアフターの確認!」
「もう、勝手に言ってよね」
俺は何を聞かされているのだろうか。特に意味の無くなった通信を切ろうとリンネカルロに話しかける。
「リンネカルロ。もう、いいだろう。通信を切るぞ!」
「今の声って勇太? ちょっ、ちょっと! 勇太と通信してたの!?」
どうやら通信はリンネカルロの単独行動だったようで、渚が驚いている。今までのやり取りを聞かれていたのが恥ずかしかったのか、渚が抗議の声を上げた。それに対してリンネカルロも言い返す。
「勇太も、声だけでも一番風呂にと思っただけですわ」
「それなら最初に話をしておいてよ。女の子同士の会話なんて聞かれたら困るでしょう!」
「あら、私は別にこまりませんわよ」
「私は困るの!」
わ~わ~と言い合いが続いている状態で、通信がぷつりと切られた。リンネカルロか渚のどちらかが切ったのだろう。仲良くしてたかと思ったらすぐ言い合いになるとは、なんとも面倒臭い奴らだな。
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