第369話 伝説級/結衣

暴走するガーディアンを退けた私たちは、伝説級ライダー二人が眠るエリアへと足を踏み入れた。そこはピラミッドのような形の石造りの建物で、何かが眠っている雰囲気を感じる。


「ここに伝説級のライダーが眠っている……」

誰に言うわけでもなく、自然とそう呟いていた。私のその呟きに、ブリュレ博士が反応する。

「そうよ。ラフシャル様が大きく羽ばたく為に必要な両翼がここにある。翼を得たラフシャル様は誰も止めることができないわ」


すでに絶大なる力を持っているラフシャルに、さらに強力な力が加わる。そう考えると、やはり伝説級のライダーなど復活させない方がいいのではないだろうかと思ってしまう。だが、そんなことをすればこの胸の宝石は私を決して許さないだろう。私だけならまだ良いが、メアリーや部下たちも無事では済まないように思える。


「ブリュレ、さっさっと復活を済ませたらどうだ」


魔導機の外部出力音でスカルフィがそう催促すると、ブリュレ博士はピラミッドへと歩みを進める。


「ラフシャル様より授かった復活の魔石……これをここにはめこめば、伝説は復活する」

ブリュレ博士はそう言いながら、円形の石をピラミッドの前にあった、ドラゴンのような形をした石像の腹の部分にカチャリとはめ込んだ。


するとドラゴンの石像の目が光る。そしてゴゴゴゴッと地響きがしてピラミッドが二つに割れた。


二つに割れたピラミッドから現れたのは二体の魔導機だった。二体の魔導機は青いシールドに包まれていた。魔導機を包み込んでいる青いシールドがゆっくりと消えていく。


「魔導機アスタロトと魔導機ベルゼブブ。古代文明時代に最強の名を欲しいままにした伝説の機体を目にできるなんて……」


ブリュレはなにやら感動しながら現れた魔導機を見つめている。


青いシールドが無くなってしばらくすると、二つの魔導機から起動音が聞こえた。完全に封印が解かれて、伝説級ライダーたちが復活したようだ。


しかし、ここで状況が一変する。ゆっくりと動き出した魔導機の一体が消えた。いや、あまりに早い動きを捉えることができなくて消えたように見えただけで、物凄いスピードで私たちに接近していた。


気が付いた時にはスカルフィの魔導機の前に立っていた。そして次の瞬間、伝説級の魔導機はスカルフィの魔導機の首を飛ばしていた。


「なっ!」


「ぎゃははははっ~~!! なんだこの脆い魔導機は!! 弱い! 弱い! 弱い!  このペルネシッサを捕まえたければ、三柱みはしらでも連れてこいよな!!」


伝説級の魔導機が外部出力音でそう叫ぶ。口調が支離滅裂で意味がわからない。だけど、恐ろしく強いことだけは理解した。


「貴様、よくも!!」

一応仲間であるスカルフィがやられて、メアリーが反撃にでる。しかし、伝説級の魔導機はその攻撃を軽く手で受け止めた。


「邪魔だよ君~ 刃物を人に向けちゃダメって教わらなかったのかい?」


軽く手を払っただけのように見えた。しかし、結果はメアリーの魔導機の外装の一部と腕を吹き飛ばすほど強力であった。


メアリーがやられて、私の怒りにも火が付いた。伝説級の魔導機との間合いを詰めて、レイピアで首元を狙って突きを繰り出す。しかし、その攻撃も軽く避けられる。


「キャハハハッ~ 少しマシなのがいた! 雑魚ばっかりでがっかりしてたけど、君となら遊んでもいいかもね」


その言葉を聞いてゾッと背筋に冷たいものが走る。しばらく感じていなかったので忘れていたけど、おそらくこの感情は恐怖というものだろう……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る