第357話 研究施設

研究施設は予想していたより巨大であった。フェリが古代文明のデータベースにアクセスして得た情報によると、この研究施設はいくつもの階層に分かれているようで、俺たちの目当てである高度なアストラルメディカル施設は最下層にあるみたいだった。


「こりゃ、一日で最下層に行くのは難しいかもな」

フェリが得た情報をもとに作成されたマップを見て、ジャンが嫌そうな顔でそう言う。


「確かに時間はかかりそうだけど、ここまできたら後は進むだけだから気は楽だな」

マップには最下層までのルートがはっきり記載されている。これを進むだけと考えたら楽なものだと思いそう言った。


「おいおい。ここは古代文明の遺跡なんだろ、そう簡単にいかねえんじゃねえか。ガーディアンや巨獣やら、またゾロゾロと出て来たらどうするんだよ」


「そうですわよ、勇太。また自爆しないといけないようなことになったらどうしますの」


以前の古代文明の遺跡での戦いを経験しているジャンやリンネカルロは、ガーディアンや巨獣の怖さを知っているので、警戒を解いていなかった。一方、渚や清音は初体験なので、好奇心しかないようだ。


「少し前から話には出ていましたけど、巨獣って本当にいるのですか!? 昔の人が作った作り話とばかり思っていましたけど……」

清音にとって巨獣は、おとぎ話に出てくる怪物との認識しかないようだ。


「巨獣ってくらいだか大きいんだよね? ね~ね~どれくらいの大きさなの?」

「大きさはまちまちだ。でかい奴はビルくらいあったな……」

「ウソ! そんなに大きいの!? うわ~見て見たいな~」

「ばか、魔導機よりでかいんだぞ。油断したら丸吞みにされるぞ!」

「え! 巨獣って魔導機食べるの!?」

「なんでも食べるんだよ。固いし力も強いし、下手な魔導機相手にするより厄介だから、出会わない方がいいんだよ」


「勇太がそんな慎重なこと言うなんて驚いた……」


渚の驚きにジャンが独自の解説をする。

「勇太もリンネカルロもあの時は痛い目みてるからな。単細胞でも、それ相応の痛みのある経験を積むと学習するってこったな」

酷い言われようだが的を射てるので反論のしようもない。



それから俺たちは、フェリの地図に従い研究施設を進んでいった。途轍もなく古い施設のはずだけど、あまり腐朽している様子もなく、少し前まで人が使用してた雰囲気すらある。あまりにも不自然なくらいに建物が維持されているので、フェリに聞いてみた。


「遺跡ってわりには建物が綺麗だよな。これってなにか理由があるのか?」

「自動修復魔導の効果が残っているからだと思います。定期的にスキャンして、破損部分を修復しているのでしょう」

「そんな便利なものがあるんだ」

「しかし……自動修復魔導の発動にもエネルギーが必要です。普通に考えたらとっくにエーテルが枯渇していてもおかしくないのですけど……」

「そうなのか?」

「はい。それほどエーテル濃度の濃い場所でもありませんし、この規模の施設を維持するのは難しいと思います」


「古代人が生き残っていて、ここにいるってオチはねえだろうな」

フェリと俺の話を聞いていたジャンが話に割って入ってくる。


「可能性がゼロとは言いません。現に古代文明時代から平気な顔をして生きている人物が身近に存在するくらいですから」

「ラフシャルは特別なんだろ?」

「たしかに特別ですが、特別な存在が他にいないとは言い切れません」


古代文明人が住んでる可能性か……敵として現れたら困るけど、友好的な人なら出てきても面白いかもしれないな。

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