第354話 さらに深く

古代文明の研究施設を探す為に、地下空間の捜索を始めた。あてもなく探すのは大変だけど、幸いにもフェリが座標を知っていることもあり、その場所へと続く道を捜索する。


大小さまざまな大きさの穴が、縦横無尽に無数に伸びていて、捜索は難航する。


「まるで迷路だね。私こういうの苦手なんだよな……」

「渚は頭脳より肉体使う方が得意だからな」

「勇太だって人の事言えないでしょう! テストで赤点取ったの一回や二回じゃないじゃないの」

「馬鹿、それはたまたま山が外れてだな……」

「普段からちゃんと勉強してればそんなことにならないでしょう! そもそも勇太は……──」


渚の小言が始まった。くっ……しまった、墓穴を掘った。こうなると長いんだよな……。


渚の小言を終わらせてくれたのはフェリの計算結果の一言であった。

「おかしいですね……どう進んでも目的の座標にはたどり着きません」

「そうなのか、フェリ?」

「はい。今ままで進んだルートをマップに落として分析しましたけど、該当するものはありませんでした」

「じゃあ、この洞窟からはいけないってことだな」

「いえ、座標を取り囲むように洞窟は伸びていますので、他の入り口があるとも考えにくいです。研究所への道が地殻変動で塞がれたか、もしかしたら隠し通路があるかもしれません」


「そうなると厄介だな……」

「もう一度ルートを洗い直して、怪しい個所を見つけてみます」


フェリはそう言うと、なにやら計算に入った。こうなってしまったらフェリ頼みで、俺達にはなにもできない。どうにか突破口を見つけてくれることを願った。


「もしかしたら、研究施設は移動したかもしれません」

「移動? そんなことできるのか!?」

「移動と言っても、施設の機能を別の場所に移しただけです」

「ちょっと待て、そうなると、研究施設がどこにあるかわからないってことか?」

「いえ、予測はできます。研究施設は地上から激しい攻撃を受けた形跡があります。それから逃れる為にさらに地中深くへと移動したのではないでしょうか」

「それはどういうことだ?」

「座標へと繋がる道を探していましたが、下へと続くルートの中に施設へと続く道があるかもしれません」

「なるほど……予想できるかフェリ?」

「はい。いくつか候補を絞りました」


さすがは優秀な学者だ。仕事が早い。


フェリの予想したルートの中に、かなり奥底まで続く道があった。一番怪しいと踏んで、俺たちはその道をひたすら進んでいった。


あきれるほど地中深く、そのルートが正解であると確信できるような場所へとたどり着いた。そこは人工的な建造物の大きな壁で、あきらかにそこになにかあることが想像できる。


「どうやら正解のようだな」

「そうですけど、壁だけで入り口は見当たらないですね」

清音の言うように大きな壁が立ちふさがっているだけで、門のように入り口と思われるものはなかった。


「封印を施しているようですね。解除できるか調べてみます」

そう言うとフェリは疑似体でミライの外へと出た。そして壁に埋まるようにある円柱の突起部分の前へと移動した。


「大丈夫です。封印は簡単なものです。これならすぐに解除できるでしょう」

五分ほどいじっただけで、フェリは研究施設の封印を解除した。大きな壁の中心部分に光の筋ができる。その光が左右に広がっていくと同時に壁が割れていき、先へと続く道が現れた。


「この先に研究施設があると思います。しかし、気を付けてください。もしかしたらガーディアンが設置されているかもしれません」


そうか、巨獣の巣の遺跡にもガーディアンがいたな。あれは下手な魔導機より強力だし、確かに警戒した方がいいだろう。

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