第353話 深い深い穴の中
それから古代文明の研究施設までの道のりは順調だった。攻撃も受けることはなく、天候が荒れることもなく、予定通り到着することができた。
「ここが古代文明の研究施設なの?」
渚が嘘でしょといった感じの反応をする。確かに研究施設には見えなかった。そこにあったのは底の見えない大きな竪穴だった。穴の先は真っ暗で様子もわからない。
「フェリ、この下で間違いないのか?」
「はい。座標的にもここで間違いありません」
「ここで間違いないのはいいけどよ、こんなのどうやって降りりゃいいんだ?」
「ヴィクトゥルフとアルレオ弐なら飛んで降りれると思いますわよ」
リンネカルロがそう言うと、ジャンは軽くあしらうように言う。
「お前たちだけ降りても意味がねえからな。ミライごと降りる方法を考えねえと」
「フェリ、どうすればいいんだ?」
「昔は普通に出入りしていたことを考えますと、おそらくこの竪穴以外にも研究施設へと続く道があると思います。まずはそれを探しましょう」
そうするしかないか。俺たちは竪穴を中心に、周りを捜索した。
「あの洞窟からいけるんじゃねえか?」
丸一日捜索してクタクタになったころ合いに、ジャンが洞窟を見つけた。場所は、竪穴から一キロくらい離れた沢で、かなり大きな洞窟だった。高さも横幅もあるのでミライでも楽々進めそうだ。
「他にめぼしいのもないから入ってみましょうよ」
捜索で疲れてるからか、渚が無責任な発言をする。まあ、確かにほかにあてもないので、とりあえずその洞窟をしらべることになった。
危険があるかもしれないので、俺と清音が魔導機で先行して安全を確認する。当然だが洞窟に明かりは無いので真っ暗だ。夜間活動用の魔導灯で周囲を照らしながら慎重に進んでいく。
「かなり深いな……本当に研究施設に通じてるかもしれないな」
「通じてないと困りますわ。また最初から入り口探しなんて遠慮したいですわよ」
リンネカルロの愚痴を延々聞きながら進むこと一時間、俺たちは広い地下空間にでた。暗くて先がみえないので具体的な広さはわからないけど、かなり広大な空間のようだ。
「ちっ……こりゃ捜索するにも骨だな。仕方ねえ、今日はここまでにして、本格的に調べるのは明日にしよう」
ジャンの判断で今日はこの洞窟内で休むことになった。確かに疲れているので丁度良いタイミングだと思う。
ミライを停泊させると、ジャンが食事を作り始めた。何も言わずに清音と渚はそれを手伝うが、足手まといになることを自分で理解している俺とリンネカルロは、見張りという名目で、ただボーっとしていた。
「この地下空洞、なんだか巨獣の巣に似ていますわね」
「そうだな。あそこまで規模は大きくないけど、確かに似ている」
そんな話をしていると、アルレオを自爆させた巨獣との戦いを思い出す。下手したら死んでたかもしれなかったからか、良い感じではなかった。
「似ているのは当然です。おそらくここは巨獣の通り道の一つでしょう。しかも近くに古代文明の遺跡も存在しますから、状況的に酷似する場所です」
俺たちの話を聞いていたフェリが説明してくれる。
「ちょっと、待てよ。てことはここにも巨獣がいる可能性があるのか!?」
「もちろんその可能性はあります。だけど、いても少数の生き残りで、アルレオ弐の驚異になるような存在ではないでしょう」
確かにアルレオ弐ならちょっとやそっとの数ではやられることはないと思うけど、群れで襲ってくる巨獣のイメージが脳裏にこびりついてるからか、気が気ではない。
「お~い、飯出来たぞ」
ジャンがそう声を掛けてくる。ご飯は食べたいけど、巨獣がいるかもしれないと思うとちょっと不安になる。そんな俺の気持ちを察したのか、フェリの疑似体が微笑みながらこう言う。
「大丈夫ですよ。私が周囲の警戒をしていますので、何かあれば伝えます。安心して食事をしてください」
それを聞いて気が楽になる。フェリなら巨獣の接近を見逃すこともないだろう。俺は食事の用意されたテーブルへと向かった。
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