第351話 粉砕
俺たちが助けにきた時には、すでに立っている監視部隊の魔導機は二機になっていた。その二機もボロボロで、なんとか動いているといったレベルである。
ソウブはすでにコアか動力部品が破壊されたのか動くことができないようで、一門だけ残った砲門で弱い抵抗を続けている。
「渚と清音はソウブを助けに行ってくれ! 俺とリンネカルロは監視部隊の魔導機を助けて敵を殲滅する!」
俺がそう指示すると、三人は短く了承してすぐに動いた。
敵の数は100機弱と多くはない。四元素砲などは使う必要はないだろう。リンネカルロもそう判断したのか、先制攻撃は魔導撃を放った。数十本の雷撃の柱が敵軍の中を縦横無尽に暴れまわる。雷撃の柱に触れた魔導機はバチバチと感電しながら粉々に粉砕される。
俺は、辛うじて立っている二機の監視部隊の魔導機の近くに降り立つ。そして彼らを取り囲んで、攻めていた敵魔導機に剣を振り下ろす。一機を真っ二つに切り裂くと、回転しながら剣を振り回し、さらに四機の魔導機の頭部を斬り飛ばす。
まさかの攻撃に、慌てて反撃しようとするスイデル伯爵軍の魔導機に向けて、魔光弾を連射する。白い光は次々に敵機を貫いていく。未知の攻撃に驚いたのか、生き残った敵機はその場から逃げ始めた。
俺とリンネカルロの攻撃でスイデル伯爵軍は半数以下まで減らされた。焦っているのか冷静な判断なのか、残ったスイデル伯爵軍は大きな黄色いライドキャリアを中心に集まり、陣形を立て直そうとする。
「おそらくあの黄色いライドキャリアにスイデル伯爵が乗っているようですわね。また逃がすと面倒ですから確実に仕留めましょう」
リンネカルロがそう言った瞬間、大きな爆発がソウブの方角から起こった。慌てて通信で状況を確認する。
「どうした、渚! 何があった!?」
「原因はわからないけど、ソウブの砲門が爆発しちゃった! ブリッジが半分吹き飛んで炎上中よ!」
それを聞いてゾッとする。エミッツは大丈夫なのか……!? ソウブの方を見ると、モクモクと黒煙があがっていた。
「ソウブを攻撃していた敵機は片付けたから、私と渚は艦内にいる負傷者の救助にあたります」
そんな状況でも冷静な清音がそう言う。
「頼んだぞ、清音、渚!」
ソウブの救助は二人に任せて、俺とリンネカルロはスイデル伯爵の方を対処する。リンネカルロの言うように、スイデル伯爵をもう逃がすつもりはない。確実に仕留める為にリンネカルロにこう指示した。
「俺が正面から突っ込むから、リンネカルロは飛行して後方に回り込んでくれ」
「了解しましたわ。一機も取り逃がしませんわ!」
飛行で後ろに回り込むリンネカルロに注意がいかないように、俺はホバームーブでスイデル伯爵軍に突撃した。
スイデル伯爵はたった一機かと油断しているのか、怯むことなく迎え撃つ姿勢を見せていた。逃げ回れると厄介なのでその方が都合がいい。俺は一直線にスイデル伯爵がいると思われる黄色いライドキャリアへ向かっていく。敵の魔導機は、俺を取り囲むように包囲してきた。
「アムリア連邦のゴミムシが!! 弟の仇だ! 苦しんで死ぬがいい!!」
黄色いライドキャリアの外部出力音でそう叫んできた。内容からするとスイデル伯爵の声のようだ。黄色いライドキャリアにスイデル伯爵がいるというのは不確定な予想だったけど、これで確証を得た。スイデル伯爵を取り逃がさない為に、全滅させるつもりだったけど、その必要もなくなった。
俺は、取り囲む敵機を斬り伏せながら、リンネカルロにこう言った。
「リンネカルロ! 黄色いライドキャリアにスイデル伯爵がいるのは間違いない! 黄色いライドキャリアを狙い撃て!!」
「了解しましたわ! 一撃で終わりにして差し上げますわ!」
ヴィクトゥルフは上空で変形を開始した。四元素砲で方を付けるようだ。ゴ~~と重低音の音が響き、次の瞬間、光の柱が黄色いライドキャリアを貫いた。範囲を収束させた高密度の四元素砲は、大型ライドキャリアを一撃で粉砕した。バラバラと部品が吹き飛び、無残にも瓦礫の山が築かれる。
スイデル伯爵は確実に討ち取っただろう。大将を倒されたことで、残ったスイデル伯爵軍は逃亡を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます