第328話 反撃の狼煙

仲間たちがやばい状況だということで、俺とリンネカルロと渚は、途中からフガクを飛び立ち、飛行して戦場へと駆けつけてきた。到着すると、すぐに周りの状況を確認する。基地は攻められ、周りは敵だらけで状況は予想よりかなり悪そうだ。


さっきジャンから通信があったけど、高速飛行中だったからかノイズで上手く通信ができなかった。今は停止しているから大丈夫だろうと、通信を開く。


「ジャン、早めに帰ってきたぞ!」

「お前たちだけか!? フガクはどうした?」

「やばい戦況の話を聞いたからな、途中から俺たちだけで飛んで先にきたんだ」

「それはナイス判断だ! こっちはアリュナもやられて絶体絶命だ」

「なんだと! アリュナは大丈夫か!」

「命に別状はない! それより早くなんとかしてくれ!」

「わかった、任せろ!」


そう伝えると、早速、敵の殲滅にとりかかることにした。


「西側から敵が接近してきてるな。渚、あそこに降すからあの部隊をなんとかしてくれ」


「ちょっ、ちょっと! もしかしてこの高さから落とす気じゃでしょうね!」

「大丈夫だよ。渚の機体はかなり丈夫らしいから」

「そうかもしれないけど、かなり怖いよこれ! もう、どうしてラフシャルは私の専用機には飛行能力をつけてくれなかったのよ」


そうなのだ。渚専用機に飛行能力が付いてないので、ここまで俺が持って飛んできていた。


「文句言ってないで気合入れろ! 落とすから集中してろよ!」

「わかったわよ……」


渚は覚悟したのか押し黙った。俺は躊躇なく、渚の機体を放り投げるように下に落とした。すぐに激しい衝突音がしたが、機体に破損はなさそうだ。


「大丈夫か渚」

「す、凄いわねこの機体。落下の衝撃も吸収されたみたいでなんともないよ」


その言葉を聞いて安心すると、攻撃の準備に入る。


「リンネカルロ、まずは敵の数を削るぞ。四元素砲の発射準備だ」

「そうですわね。果実に群がる虫を片付けましょう」


ヴィクトゥルフは四元素砲の発射の為に機体を変形させる。俺の機体は腰に付けた銃口のような部品を持ち上げて、背中の部位と連結させて発射の準備を整えた。


「フェリ、敵軍を分析して四元素砲の攻撃でもっとも効果的なポイントを割り出してくれ」


当然だが、フェリは俺専用機に移植していた。大量のエーテルを消費する四元素砲はいくらクラス2専用機でも連発はできない。だから効果的なポイントを探る。

「周囲をスキャンします……基地の東側の防壁周辺と、西側周辺に敵の密集を確認できます。周囲に生存する友軍もいませんので最良のポイントだと判断できます」


「よし、リンネカルロは東側を狙ってくれ。俺は西側を狙う」

「わかりましたわ!」


「フェリ、四元素砲の発射準備に入ってくれ!」


「了解しました。四元素砲の発射準備開始──ルーディアコア、アクセス──スペル『アグニ・グラディア』詠唱開始、スペル『アースタイタン』連結詠唱開始、スペル『シア・トリトーン』連結詠唱開始、スペル『ゼウス・ウェポン』連結詠唱開始──スペル『ヒロイックブースト』同時詠唱開始──範囲選択、位置補正、照準準備完了──四元素砲の発射準備が完了しました」


「よし、四元素砲、発射!!」


グンッと少しの反動と同時に、構えた銃口の周りから光る波動が波紋のように広がり、銃口から光の帯が狙ったポイントに一直線に伸びていく。着弾すると、一瞬時が止まったような錯覚の静寂の後、一気に円形に光の爆風が広がる。遅れて爆音が耳に届く。無数に群がるようにいた敵軍の中にぽっかりと穴があいた。


「すごいな……」

見たこともない威力の攻撃に、放った本人である俺も言葉を失う。


さらに少し遅れてヴィクトゥルフからも四元素砲が発射される。威力は俺専用機に及ばないが、広範囲の敵を一掃した。


二発の四元素砲の発射は戦況と、戦場の雰囲気を一変させた。上空からも敵軍の動揺が見て取れる。それに反して味方の士気は上がり、反撃の狼煙としては最高の形になっただろう。

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