第319話 強敵とナナミ/ジャン
あれはヤバイ、そう感じた俺はすぐにナナミに指示を出した。
「ナナミ! 前線にヤバそうなのが出てきた! 今、この場であれに対抗できるのはお前しかいない。悪いが対応してくれ!」
「うん、わかった。どこにいるの?」
「お前の今の位置から、北東の方面だ。ペフーのギガンテスの近くだ」
「あっちだね。わかったよ、ナナミに任せて」
ナナミが向かっている間にも、強敵の機体は味方の重装魔導機を蹂躙している。このままだと前衛が崩壊してしまう。ロルゴもそれを感じたのか持ち場を仲間に任せて、強敵機に向かっていく。確かにロルゴのガネーシャなら倒せはしなくても止めることはできるかもしれない。
首を跳ね飛ばされる寸前の味方機を庇い、ロルゴのガネーシャが強敵機の前に出る。強敵機はガネーシャを観察するように少し見ると、ゆっくり剣を構えて攻撃態勢になった。ロルゴが攻撃に備えて盾を構えた瞬間、高速の斬撃が繰り出された。
斬撃は盾で防いだがその威力は凄まじく、大型のガネーシャが後ろに飛ばされた。
「ロルゴ!」
ロルゴはゆっくりと立ち上がると、また盾を構えて強敵機に向かっていく。強敵機はさらに大きく剣を構えて、さっきより力を込めてガネーシャに斬撃を繰り出した。ロルゴは両手に装備している二つの盾を交差させるようにして衝撃に備える。がっちりと構えていた防御態勢を強敵機はいともたやすく崩す。ガネーシャはさっきより大きく後ろに飛ばされる。
ダメージも大きかったようで、ロルゴは中々立ち上がれない。そこへ強敵機が近づき剣を振り上げた。
やばい、やられる。そう思った時、金色の機体が視界に飛び込んできた。そして強敵機が振り下ろした剣を跳ね返す。
よし! ナナミが間に合った。
ヴァジュラはさらに強敵機に連続の剣撃を繰り出す。強敵機は剣でそれを防ぐが、ナナミの勢いは凄まじく、どんどん後退させられる。
このままナナミが押し切るかに見えたが、強敵機はナナミの剣をタイミングよく受け流すと、反撃に転じた。繰り出された鋭い剣の突きはヴァジュラの喉元を狙っていた。ナナミはとっさに首を捻ってそれを避ける。間髪入れず、強敵機は体を捻り、回転力を利用して剣を叩きつけてきた。ナナミはその攻撃を左手に持っている盾で防ぐ。ガンッという重い音が響き、ズズズッとヴァジュラが後ろに押しやられていく。
ナナミは盾を上手く使って押してくる強敵機の力を受け流すと、右手の剣で反撃する。その攻撃に対して強敵機は回避が間に合わず、肩を貫かれる。ナナミは肩に刺さった剣を引き抜いて、再度攻撃しようとするが、強敵機は力強く体当たりしてきた。
ヴァジュラと強敵機はもつれるように地面に転がり倒れる。このまま倒れていてはやられると思ったのか、二機は急いで立ち上がって剣を構えた。
戦いは互角か、ややナナミが押しているようには見える。このまま戦っても勝てる可能性の方が高いように思えるが、この戦場の戦況を考えたらあまり好ましくない状況であった。
守りの要であるロルゴのガネーシャが強敵機との戦いで傷つき、切り札のナナミが強敵機に抑えられている。前衛はペフーのギガンテスの活躍でなんとか持っているが、このままでは崩されるのは時間の問題であろう。
あれは計算外だよな……俺は恨めしそうに強敵機を見つめて、この状況を打開する策を考えていた。
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