第313話 支援集中/ジャン
ヴァルキア帝国、リュベル王国の連合軍との戦い二日目、敵は朝からやる気満々のようで大軍を広い範囲に展開して攻撃してきた。昨日のように無双鉄騎団の守る陣を集中してくれる方が都合が良かったが、まあ、この展開の対応もちゃんと考えている。
「今日はこの陣の守りは練習生部隊だけで対応する。無双鉄騎団は、他の友軍の支援にまわってくれ」
攻撃が集中していなのなら練習生部隊だけで守るのは難しくないだろ。それより他の戦場が心配なので、無双鉄騎団の面々を支援に向かわせることにした。
アムリア連邦軍の指揮官たちにその旨を伝えて、支援要請を受けた危うい戦場に、無双鉄騎団を送る手はずになった。
すると、すぐに北北西の友軍が苦戦しているとの連絡がきた。確かに北北西のアムリア軍は戦力的に手薄で、心配していたが、早々に苦戦しているようだ。それにしても北北西の部隊の指揮官は判断が早いな、まあ、全滅寸前で支援要請がくるよりはマシだが。
「アリュナ、エミナ、ユキハ、アーサー、お前たち四人は、北北西の戦場に支援に向かってくれ」
ここから距離のある北西の戦場には、機動力の高そうな四人を支援に向かわせることにした。向こうでの指揮はアリュナに任せる。
「あいよ、任せときな。戦況をひっくり返してくるよ」
アリュナはルーディア値の成長だけではなく、戦術眼や戦闘技術も向上がみられる。そんなアリュナが言うのなら本当にひっくり返してくれるだろう。
アリュナたちが北北西の戦場に向かってすぐに、東南方面の友軍からも支援の要請がきた。
「すまない、無双鉄騎団。今、かなり強力な魔導機部隊の攻撃を受けている! こちらの魔動機では歯が立たない! すまないが至急、支援を頼む!」
強力な魔導機部隊ということで、東南方面の部隊にはこちらも強力な駒を送ることにした。
「清音、ブリュンヒルデ、トリス、お前たち三人は東南の味方の支援に向かってくれ」
旧剣豪団の三人なら、どんな敵にも後れを取ることもないだろう。
「わかりました。支援に向かいます」
清音はこれ以上ないくらいに冷静な口調でそう返事をした。指揮は頼むまでもない、清音に任せておけば問題ないだろう。
危うい戦場には支援を送ったし、配備されたサラマンダー主砲の活躍もあり、全体的な戦況は悪くなかった。練習生たちも無難にこの陣を守備している。
このまま二日目もこちらの優勢で終わるかなと考え始めた、そんな時、急報が入った。それは東の部隊の司令官からで、かなり慌てた様子であった。
「おっ……大型の魔導機だ! まるで伝説の巨獣のようにこちらに迫ってくる! なんだあの砲撃は!! ダメだ! 助けてくれ無双鉄騎団! 配下の魔導機がどんどん破壊される!」
アムリア連邦の中でも規模では一、二を争う大部隊である東の部隊が、一方的に攻められるのはただ事ではないだろう。すぐにナナミたちを向かわせることにした。
「ナナミ、ファルマ、ロルゴ、東の部隊が苦戦中だそうだ。お前たち三人は東に向かってくれ」
もうこの三人しかいないのでしかたないのだが、向こうで指揮させるには不安がある面子である。少し悩んだけど、指揮はファルマに頼んだ。
「ちょっと、ジャン! ナナミ、指揮できるよ!」
「お前は戦闘に集中してろ! ファルマは空から戦場がよく見えるから指揮するには適任なんだよ」
「うっ……そうか、それなら仕方ないよね」
どうもナナミはこの三人の中では一番自分がしっかりしていると思っていたようだ。拗ねられたら厄介だから、適当な理由に納得してくれてよかった。
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