第293話 成果

上からの許可がでたのか、予定通りルジャの魔導機部隊が国境を越えてきた。50機ほどの敵機は、国境の境になっている川を腰までつかりながらゆっくりと歩んでくる。


「まだ、攻撃するなよ。向こうが攻撃してくるまで待つんだ」


無双鉄騎団は、砦の建築をしている工作部隊を守るように、敵部隊の壁になる。

「こちらはアムリア連邦軍だ。ルジャ帝国の魔導機部隊に告ぐ。無許可での軍隊の侵入は侵略行為とみなす。無残な残骸に変わりたくなければ、ただちに退去されたし」


ジャンが警告とも挑発ともとれる言葉をルジャ帝国軍にかけた。


そしてその効果があったのかルジャ帝国軍は武器を振り上げて襲ってきた。


突撃してきた最初の一機がヴァジュラを攻撃する。ナナミは大きな斧の攻撃を盾で受けた。

「攻撃されたよ! 反撃していいの!?」


「よし! 反撃していいぞ! 練習生部隊も出撃だ! だけど、連邦領内で全滅させるなよ。少しは要塞まで撤退させるんだ。それを追撃した、ていで要塞を攻略するぞ!」


まあ、たしかに体裁は重要だ。連邦領内で敵を殲滅して、さらに要塞にまで攻撃を仕掛けたのでは筋が通りにくいけど、追撃の勢いで要塞を攻撃するのは筋書きとしてはありえるだろう。


俺たちが本気で反撃したらすぐに殲滅しそうなので、無双鉄騎団の面々は工作部隊の守りに集中して、メインの反撃は練習生部隊にまかせた。


やはりそうなると、自ら指導した生徒たちが気になる。俺は工作部隊を守りながら、彼らの戦いに注視した。


レジナント大佐は階級が高いこともあり、練習生部隊の指揮をしていた。自らも剣を振り敵を倒しながら、味方に指示をだしている。剣の使い方は前よりかなり上手くなっていた。実践ではさらに動きが鋭く、強者の風格すら漂わせている。


マルムムとミルムムの姉妹はその絆から生み出される連携攻撃で敵を翻弄する。練習生の中でも成長率が高く。ルーディア値はすでに5万を超えているそうだ。驚異的な力の上に、完璧な連携攻撃に耐えれる敵などいるわけもなく、姉妹の周りには敵の残骸が積み重なっていく。


俺と同じ日本出身のサトルは、特殊な魔導機を愛用していた。ファルマのガルーダのようにアローを使用する機体なのだが、両腕に二つのアローを持ち、背中からはえた二本の腕で弓を引くスタイルである。ただでさえ通常の二倍のアローを射出できるうえに発射速度が異様に速いので、一人でアロー中隊ほどの戦果をみせている。


寡黙な女嫌いのペフーは、メルタリア王国の内戦の時に戦った、超大型魔導機のような機体で無双していた。分厚い装甲を打ち破れる敵などいるわけもなく、のそのそと歩きながら、大きな棍棒のような武器を振り回していた。


俺が教えたことが生かされているかどうかは別として、みんなかなりの戦闘力を発揮している。教え子以外の練習生も負けず劣らすの活躍で、あっという間に要塞は陥落寸前まで追い込んだ。


「ジャン、要塞の敵が逃走し始めたようだよ」

「よし、追撃はしなくていいぞ。しかし、要塞はしばらく使えないように破壊しろ」


要塞の破壊にはペフーの超大型魔導機、ギガンテスが大活躍した。大きな棍棒で、要塞の城壁を破壊していく。


「ありゃ便利だな。無双鉄騎団にもあのサイズの魔導機を一機導入するか」

ジャンがギガンテスの破壊風景を見てそう言う。

「フガクの格納庫にあんなの入る余裕ないって」

俺はそう指摘したが、ジャンの発言は思ったより本気だったようで、こう反論してきた。

「別に無双鉄騎団のライドキャリアが一隻である必要はねえじゃねえか。今でもムサシが二番艦みたいになってるし、三番艦、四番艦と増えてもいいんじゃねえか」

「おいおい、そんなに増やして大丈夫なのか」

「その分、大きな仕事をすれば問題ない」


どこまで本気かはわからないけど、今の無双鉄騎団なら、それくらいの稼ぎは見込めると計算しているのかもしれないな。


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