第280話 素材を求めて
「どうにもこうにも、まず、早急に解決しないといけないのは資金の問題だ!」
フガクのミーティングルームで、声を大にしてジャンがそう言い放った。
アリス大修道院にアムリア連邦の支援軍が到着したら、俺たちはここを離れることになっていた。その後どうするかの会議でジャンは主張する。
「俺は蘇生の為の錬金素材を探しにいきたいんだけど……」
俺が控えめにそう言うと、ジャンが鬼の首を取ったように言ってきた。
「それだ! そう錬金素材のほとんどはカネで解決できる! カネさえあればどうにかなるんだよ!」
確かにラフシャルの話では蘇生に必要な錬金素材のほとんどは一般的なもので、市場で手に入るらしい。まあ、錬金素材自体が高価なものばかりらしいので値は張るらしいけど。ここはジャンの言うようにまずは資金の調達を考えた方がいいかもしれない。
「錬金素材もそうだけど、ルーディアコアの生成に必要なオリハルコンや鳳凰石も忘れないでよ」
ライザの指摘でみんな思い出す。そう言えばそうだった。コア生成ができなければヴィクトゥルフの修理も終わらないし、俺専用機もいつまで待っても完成しないだろう。
「とにかく、まずは仕事を受けようと思うのだが、どうだ」
「それだけの資金を稼ぐには相当大きな戦争じゃないとダメだろうね。三国同盟にまた話をしたらどうだい?」
三国同盟のターミハルは剣豪団と古い付き合いがある。清音がその言葉に反応する。
「三国同盟とつながりがあるのですか?」
「いや、勇太が剣豪団にいるかもしれないってなったからね。情報を集める為にターミハルまで出向いていたのさ。それがきっかけで仕事を一つ引き受けて、縁ができてね」
「そうですか……剣豪団がない現状で、三国同盟がエリシア帝国に対抗できるか心配してましたけど、確かに無双鉄騎団ならその代わりは務まるかもしれませんね」
「お仕事だったらアムリアからもお願いしたいみたいなこと言ってたわよ」
渚がそう話を切り出す。
「確かにヴァルキア帝国やリュベル王国と事を構えるかもしれないからね。戦力は少しでも必要かもね」
「うん。まだ連邦議会での決定が決まっていないから正式なオファーじゃないのだけど、軍の強化の協力をしてもらいたいって言ってた」
「軍の強化か……そりゃ、もしかしたら交渉次第では大きな仕事になりそうだな……」
ジャンが不適な笑みを浮かべて何か金儲けのことを考え始めた。
その後、ラネルから正式なオファーがやってきた。依頼内容は軍の強化への協力と、渚の話通りであった。よし、俺に任せとけとジャンが直接ラネルと交渉して、なんと50億もの大きな仕事へと変えたのには驚くより呆れた。
「こら、ジャン、ラネルに無理言ったんじゃないだろな」
「馬鹿、ちゃんとラネルも納得してのことだ」
「それより、どうすりゃ、そんな額を引き出せたか、私はそれが気になるね」
アリュナがそう言うと、エミナがジャンを不審者でも見るような目で見ながら指摘する。
「まさか詐欺まがいな話したんじゃないでしょうね。ちょっとやめてよそんなみっともないこと」
「違うって! ルーディア強化や、ライドキャリアに取り付ける主砲の技術提供の話をしたんだよ」
「四元素砲を売るつもり!?」
「いや、あれはメンテナンスが難しくて他で扱うのは無理だ。だからフガクの副砲で使用しているサラマンダーを主砲転換した物を提供することにした」
「ラフシャルは承知してるのか? 自分の技術を勝手に売られたら怒るぞ」
「ちゃんと確認したって。この金欠の責任はあいつにもあるからな、ちゃんとそれがわかって納得してる」
それにしてもジャンの奴、よくそんなこと思いつくよな……まあ、ともかく50億も入ってくればしばらくはお金には困らないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます