第271話 助けに

「勇太……無双鉄騎団っていったい何者なの? 強いとは聞いていたけど、まさかここまで、でたらめな強さなんて……」

清音が無双鉄騎団の強さを目の当たりにしてそう言う。トリスとブリュンヒルデも驚きを隠せないようだ。

「勇太さんが強いのが分かった気がします。想定外にもほどがありますよ」

「全盛期の剣豪団でもこれほどのことは……」


リュベル王国軍もフガクの主砲を食らってからあきらかに動揺が広がっているのがわかった。今なら本院までいくのは難しくないだろう。


「アリュナ、すまないけど、今から山の上まで向かうから、ジャンに援護してくれるように言ってくれるか」


外部出力音でそう頼むと、アリュナはすぐにジャンに通信でそれを伝えてくれた。さらに山の上まで一緒に行くといってくる。確かに通信の問題もあるので、同行してくれた方が都合がいい。


「俺と清音で本院に向かうから、ブリュンヒルデとトリスはダイラム隊をよろしく頼む」

「自分もいきたいっす!」

「ダメだ。敵が混乱しているっていってもまだまだ数が多いし、トリスの虎徹はボロボロだろ」

そう言うと残念そうに引き下がった。


ジャンは俺が山の上にいきやすいようにと、そのルート上にいる敵部隊に艦砲射撃をおこなってくれた。四元素砲で焼け野原になった道を、俺のエクスカリバーと清音の菊一文字、それにアリュナのベルシーアが駆ける。


「勇太、フガクの主砲は弾切れだそうだよ。あとはなんとかしろってジャンが言ってる」

どうやら弾切れになるまで撃ってくれたみたいだ。山に残っている敵はそれほど多くないので問題ないだろう。


フガクの主砲からの逃れた生き残りの敵部隊が、ばらばらと襲ってくるが、菊一文字とベルシーアの剣が瞬殺していく。清音の剣技の切れの良さにアリュナが気が付いたようで聞いてきた。


「勇太、あの魔導機のライダーは何者だい?」

「あの魔導機に乗っているのは元剣豪団の清音だ」

「清音! 天下十二傑の剣皇清音かい⁉ どうりで……」

やっぱり清音は有名人のようで、アリュナも知っていたようだ。


山の上からみんなが戦っている麓をみると、少数の無双鉄騎団に大軍のリュベル王国軍が翻弄されているのがよくわかる。リュベル王国軍の中には逃げ出している部隊もみえるので、撤退するのも時間の問題だろう。


アリス大修道院の本院に到着すると、無残に倒れているダイラム伯爵の部下たちをみて胸が締め付けられる。食堂などで一緒に食事した思い出が浮かんできてさらに悲しみが大きななる。


本院はぼろぼろに破壊されているが、奥の方ではまだ戦闘の音がしている。戦っているってことはまだ、生きている人がいる。俺は急いで奥に向かった。



最後の砦ともいうべき、本堂の入り口をダイラム伯爵一人が必死に守っていた。すでに彼の魔導機はボロボロで、背中には敵の剣が刺さっている。


ダイラム伯爵と戦っている敵機は10機ほど。俺は跳躍して敵機に近づくと、剣を叩き下ろすように一機を破壊した。同時に清音とアリュナも動いていた。右と左にわかれるように移動すると、それぞれ敵機を斬り伏せていく。


10機の敵は数秒で殲滅した。それをみたダイラム伯爵は安心したのかその場に膝をつく。

「ダイラム伯爵、大丈夫ですか?」

「勇太殿……かたじけない! まさか助けにきてくれるとは……」

「いえ、間にあって良かったです。マザー・メイサや他のシスターたちは無事ですか?」

「皆、本堂の中に避難しています」


それを聞いて心底安心した。


「勇太、どうやら下も片付いたようだよ。リュベル王国軍は撤退を始めたってさ」


どうやらアリス大修道院を守り切ったようだ。だけど、無双鉄騎団の到着が少しでも遅れていたらどうなっていたか……タイミングよく現れてくれた仲間に心から感謝した。

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