第246話 剣豪団の解散
エリシア軍は、俺がムサシにオヤジを連れて行っている間に全軍が撤退した。三傑が敗れたことでしばらくは戦う力も気力もないだろう。
しかし、剣豪団の被害は甚大であった。特にスカルフィ一門はディアーブロをはじめとして、多くのライダーが命を失った。スカルフィはこの結果を見てどう思うのだろう。自分の弟子だちが無残に散っていたことを彼は知っているのだろうか。
剣豪団の生き残りに、剣聖ヴェフトの死が伝えられた。皆、複雑な表情で、それを聞いた。剣豪団の団員は清音一門にしろスカルフィ一門にしろオヤジに憧れて入団してきたものばかりだ。その落胆ぶりは見ていられないほど大きかった。
オヤジの蘇生の可能性については清音と話をして伝えないことになった。確実な話でないこともあり、過度な期待だけをさせるとダメだった時にさらに落胆させてしまうからとの配慮である。
さらに清音は大きな決断をしていた。
「剣豪団を解散する!? 本気か清音!」
「はい。剣豪団は父上を慕う者たちの受け皿として設立されました。父上がいない今、存在する意味も意義もありません」
「だけど生き返るかもしれないんだぞ」
「その期待に皆を巻き込むわけにはいきません。それに私はこの先、私情で動くことになります。それについて来いとは言えませんから……」
「スカルフィのことだな」
「はい。父上の仇であるのもありますが、それ以上に自分の弟子にした仕打ちは許せません! 必ず報いを受けさせます!」
スカルフィに対しては俺も似たような気持ちだけど、清音と同じ決断はなかなか出来ない。だからこそ清音から強い意志を感じた。
すぐに剣豪団の団員たちに解散の話が伝えられる。皆、最初は戸惑っていたが、やはりオヤジの死に対する落胆が大きいのか何も言わずにそれを受け入れた。
しかし、剣豪団が無くなっても清音から離れることを拒否する者たちもいた。ブリュンヒルデとトリス、それに数名の清音の弟子は彼女のもとに残ることを選択した。
「師匠! 俺は師匠について行きますから!」
「私も離れるつもりはありません」
少し困っていたが、本音ではその言葉が嬉しいのだろう。最後には彼らを受け入れた。
清音は剣豪団の財産を、ムサシと数機の魔導機を除いて全て現金化する。それを生き残った団員全員で分配した。贅沢をしなければ一生遊んで暮らせるほどの額である。団員たちは複雑な心境ではあるだろうが、どこか安心しているようだった。さらに清音は俺にも分配しようとしたが、それはさすがに貰えないので丁重に断った。
「オヤジを蘇生する為にも無双鉄騎団と合流しないといけない。その為にはまずは無双鉄騎団と連絡を取る必要があるけど、通信共有している国や組織となるとアムリア連邦とメルタリア王国くらいしかないんだ」
「わかりました。ここからですとアムリア連邦の方が近いですからそちらに向かいましょう」
アムリア連邦まで行けば渚やラネルがいるから力になってくれるだろう。無双鉄騎団が現在どこにいるかわからないけど、合流するのも時間の問題だと思う。
「だ、大先生は生き返るんですか!」
アムリアに向かう道中、残ったメンバーにはオヤジの蘇生の可能性について話をした。案の定、ブリュンヒルデたちは驚きと喜びの反応を示す。
「だからブリュンヒルデ。その可能性があるってことだから……」
「でも、本当に生き返ったら、また剣豪団を復活することもできますね」
トリスが嬉しそうに話を続ける。
「トリス。過度な期待は禁物だぞ。清音の言っている通り、可能性があるってだけだからな」
俺がそう注意しても、トリスは嬉しそうな表情を変えることはなかった。よほど希望が出てきて嬉しいのだろう。
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