第236話 奮闘

「勇太さん。申し訳ありませんが、今回はお守りは出来なさそうです」


ブリュンヒルデはオヤジとスカルフィ不在のこの状況を冷静に捉え、敵の戦力を考えると、この戦いでの自分の役割は大きいと判断したようだ。もちろん、そんな現状を無視して俺を守ってくれなんて言わない。


「わかっている。俺は一人でも大丈夫だから、ブリュンヒルデは思う存分戦ってくれ」


ナマクラでも三傑以外の相手ならなんとかなる。俺も最大限、戦力になる為に頑張るつもりだ。


前線で部隊を展開していたバルミハル軍とエリシア軍の戦闘が始まった。残念だけど、バルミハル軍では壁の役割すら難しい。すぐにエリシア軍の魔導機が、剣豪団の元へと流れ込んできた。


「敵も無限ではありません! 確実に一機づつ撃破していきましょう!」


清音の指示に剣豪団の団員たちは応える。今回ばかりはスカルフィ一門も清音一門もない。剣豪団が一丸となってエリシア軍に対した。


乱戦になると、俺のナマクラにもエリシア軍の魔導機が近づいてくる。その魔導機はすぐに長い槍で攻撃してきた。槍の攻撃を避けると、真上から槍に向かって剣を振り下ろす。槍は真っ二つに粉砕され、それを持っていた魔導機は槍を捨てた。腰に剣も装備していたその魔導機は、剣を引き抜いてナマクラに斬りかかってきた。


敵の剣を絡めとるように真上に弾き飛ばすと、丸腰になった敵機の首を斬り飛ばした。輪切りになった首からプシュプシュと何かが吹き出し、敵機は静かに膝をついて倒れた。


まずは一機──


さらに二機の敵が襲いかかってきた。右からきた敵機は大きな斧を振り上げて攻撃してくる。それと同時に、左からは両手剣で、野球のバットスイングのように横切りで攻撃してきた。


縦横の隙のない連携攻撃に訓練された兵の質を見る。しかし、残念だが、オヤジに剣を仕込まれた今の俺には通用しない。大きな斧の攻撃を足のステップで避ける。それと同時に横から襲いかかってくる両手剣の攻撃を剣で弾き返した。


大きな斧を振り下ろした敵は、斧の地面にめり込ませて動きが止まる。大きな斧の威力の代償に、攻撃後の隙が大きすぎた。俺は大きな斧を持つ敵の胸元に剣を突き刺した。


突き刺した敵から剣を引き抜くと、両手剣の敵に剣を振るう。その攻撃は敵に受け止められるが、すぐに剣を引いて二撃目を繰り出す。その剣撃には反応することができず。ナマクラの剣は敵の首元に深く突き刺さった。


これで三機──


見るとトリスが三機の敵機に囲まれて苦戦している。無視することもできないので助けに入ることにした。


トリスの虎徹が一機の敵の攻撃を剣で受けているところを、別の二機が背後から斬りかかろうとしている。俺はナマクラでその二機に駆け寄ると、一機に体当たりを食らわせ、もう一機を剣で斬りつけた。斬り付けられた敵機の剣を持つ腕が斬り飛ぶ。さらに体当たりでバランスを崩している敵も、返す刀で斬り伏せる。まともに顔から腹にかけて斬りつけられた敵機は、シューシューと空気の抜けるよな音を吐き出しながらそのまま地面に倒れ落ちた。


トリスは受けていた敵を剣で押し返すと、突きのような剣撃で頭部を破壊する。そして助けた俺に礼を言ってきた。


「勇太さん! 助かりました! やっぱり勇太さんはすげ〜ですね! 多分、こいつら三機ともハイランダーでしたよ。ナマクラで圧倒できるなんて信じられませんよ」


オヤジに教わる前の俺だったら、ナマクラでハイランダーを相手に戦うのは難しかっただろう。成長を感じてオヤジに感謝する。


戦況は互角に戦っているように見える。それはエリシアの三傑の姿をまだ見かけないからだろう。三傑が出てきたら、清音一人の剣豪団は圧倒的に不利になる。


「ブリュンヒルデ。勇太。申し訳ないけど、少しこの場を任せます」

急に清音が通信でそう言ってきた。


「どうするつもりだ?」

「いくらなんでも父上が遅すぎます。エリシアの三傑がまだ出てきていない今のうちに、私が様子をみてきます」


確かにオヤジは遅すぎる。しかも通信の反応がないのも気がかりだ。

「わかりました。ここはなんとか死守します」

ブリュンヒルデは清音にそう答えた。もちろん俺もそれに了承する。


しかし、剣豪団の三傑全員不在での戦いは正直厳しいと思う。すぐに、オヤジと清音が戻ってくればいいいけど……

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