第220話 剣聖

オヤジの強さは魔導機に乗っても遺憾なく発揮されている。オヤジの白い魔導機エクスカリバーは戦場でも目立つ。天下十二傑で剣聖と名を持つ首に対して、手柄を急ぐ敵のライダーが殺到してきているが、そのほとんどを一撃で葬り去っていた。


オヤジの凄いところは、他の仲間に対するフォローが完璧なところであろう。自分に向かってくる敵を切り捨てていきながら、それと同時に味方が孤立しないように立ち振る舞い。複数人を相手に戦っていると助力する。しかし、どこかで線引きがあるのか、一対一での戦いには手出ししていないように見える。


他の剣豪団の面々も想像通りの活躍をしていた。中でも清音の菊一文字の動きはヤバイ。疾風迅雷の名は伊達ではなかった。稲妻が走るような勢いとスピードで動き回り、神速の剣で敵をなぎ倒していく。さらに大型魔導機すら一刀両断する剣力もあり、まさに死角がない。


さらに兄弟子のスカルフィのアロンダイトは剣王の風格で戦っていた。無駄のない動き、堂々とした立ち振る舞いで、敵を斬り倒している。清音ほど動き回らないが、ゆっくりと確実に敵を殲滅していた。


意外な活躍をしているのはトリスの搭乗してる魔導機『虎徹』である。ハイランダーだとは聞いているが、剣の扱いが、今まで見てきたハイランダーとは明らかに違い、剣豪団の質の高さが窺える。清音によく教え込まれているのだろう。堅実な戦いで敵を倒していた。


ブリュンヒルデは俺のお守りで積極的に攻めてはいなかったが、近づく敵は瞬殺している。やはり剣技は驚異的で、圧倒的強さを見せている。


俺も負けてはいられない── そう思い、剣を構えて前に進む。


見た目から雑魚っぽいナマクラを見て数機の敵が迫ってきた。周りの剣豪団の強そうな魔導機と比べると倒しやすと思ったのだろう。我先にと迫っくる。お守りのブリュンヒルデが近づいた二機の敵を斬り伏せるが、残りはナマクラの前までやってきた。近づいてきた敵は三機。エリシア軍の汎用魔導機のようで、どれも同じ見た目をしている。どれくらいの力量があるライダーかわからないけど、鉄平のクレイモアに比べるとひ弱に感じる。


まずは正面の敵機を剣で斬りつける。キンッと高い音が響いて、剣が弾かれる。やはり基本性能はひ弱なナマクラだ、普通に攻撃しただけでは斬ることはできない。俺はルーディア集中に入った──


集中を隙と見たのか、両脇から二機の敵が槍で突いて攻撃してきた。その攻撃を避けると、今度はキレの良い感じで剣を振る。サクッとした感じで右の敵機を斬り裂いた。初撃がひ弱な攻撃だったのをみていたので油断していたのか、槍で攻撃してきた左の敵は、仲間を斬られてオロオロと慌てだす。その敵も上段から剣を振り下ろして両断した。


残った一機は、後ろから近づいてきたブリュンヒルデの鬼丸国綱に首を飛ばされて倒された。



「おかしい……ユウトのアジュラの姿が見えない」

オヤジが剣豪団の共有通信でそうぼやく。


「ロゼッタのアグニアとネメシスのガイアティアも見えませんね、三傑の参戦はガセ情報だったのでは?」

清音がオヤジの言葉にそう答える。


「だといいがな、もし、意図的なガセ情報だったとすれば、ちょっと厄介なことになるかもしれん」

「この10000機の大部隊が囮だと言うのですか?」

「ユウトやロゼッタの率いる精鋭部隊の姿も見えない。清音、お前は10000機の敵と、ユウトやロゼッタの率いる精鋭部隊ではどちらが脅威に思う?」

「そっ、それはユウトの方が脅威に感じますが……しかし、いくらなんでも10000機の囮なんて……」


「スカルフィ、すぐにターミハルの軍司令部に連絡だ。エリシア軍に他の動きの可能性あり、注意せよと伝えろ」


「わかりました。すぐに連絡します」


オヤジは敵の動きなどに不審な気配を感じたのか、そう指示を出した。確かに俺もこのエリシア軍には数の多さだけを感じるだけで、強さとか威圧感と言った気配を感じていなかった。

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