第177話 白いガーディアン/結衣
一機にも苦戦したあのガーディアンが数十体は迫ってきたいた。こちらは私とメアリー、それとエンリケと他のライダーも出撃している。
「エンリケ、あんたにはガッカリだわ」
「なんだ、メアリー、もしかして俺に気でもあったのか」
「何を馬鹿なことを……それよりお客さんよ、ここだけは協力してあげるから、さっさと片付けるわよ」
ガーディアンに対しては協力す姿勢を見せている。このままライドキャリアが墜とされたら帰るのも難しくなるので仕方がない。
「結衣、右からくる集団を抑えて頂戴、私は中央の敵を防ぎます」
「了解、気をつけてね、メアリー」
「あなたもね」
メシア一族もラフシャルも何を考えてるのかわからない。今、完全に味方だろ言えるのはメアリーだけだろう。本当に気をつけて欲しいと心から思った。
私はメアリーの指示通りに、右から近づいてくる集団を迎え撃った。敵の数は10体ほどで、少し前に戦ったガーディアンより小柄で、色も茶色から、黒ぽい色へと変化していた。戦闘力も少し弱いようで、これならなんとか戦えそうだった。
レイピアで、三体目のガーディアンを貫き倒した時、急激な異変を感じた。ガーディアンたちの動きが活発になり、動きが組織的に変わる──何か鋭い視線を感じた私は、遺跡の奥の暗闇に光る二つの目を見た。
「……敵?」
暗闇からゆっくり現れたのは、他のガーディアンとは明らかに雰囲気が違う、白いガーディアンであった。
白いガーディアンは消えるように加速した。一瞬で間合いに入られる。咄嗟にレイピアを突き出し攻撃するが、それを軽く避けられた。
「くっ! 早い!」
白いガーディアンは何度か左右にステップしてフェイントをかけると、一気に喉もとに噛み付いてきた。私は首を捻ってその攻撃を辛うじて避けた。しかし、完全に避けたと思ったのに、エルヴァラの首の部品が弾け飛ぶ。少しでも避けるのが遅れていれば、おそらくエルヴァラの首は斬り飛ばされていたであろう。
さらに白いガーディアンの攻撃に合わせて、周りの通常ガーディアンも攻撃に参加してくる。さっきまでの単調な攻撃からは想像もできないほどの連携で、あらゆる方向から波状攻撃が襲いかかってきた。
猛攻を相手にも、私は必死にガーディアンの攻撃を避け続ける。そして僅かな隙を狙って、レイピアで一体づつ貫いていく。通常のガーディアンはなんとかレイピアを当てることができるが、白いガーディアンには擦りもしない。
どうしよう……この白いの強すぎる……
白い強敵というと、あのエミナの仇である無双鉄騎団の白い魔導機を思い出す。直接、エミナを殺したのは金色の魔導機だったが、印象には白い魔導機の方が強く記憶に残っていた。
無双鉄騎団との戦闘を想像して、エミナのシュリアプルが剣で貫かれた瞬間を思い出し気持ちが昂っていく──怒りはやがて、暴力的な感情を呼び覚ます。
ガーディアンを怒りに任せて、レイピアを振るう。突いて突いて、攻撃してきたガーディアンを貫き破壊していく──
だけど、怒りに任せた攻撃でも白いガーディアンには一撃すら与えることはできない。このままではこちらがやられてしまいそうだった。
白いガーディアンを倒す為に、なんとか方法はないか考える──周りを見ると遺跡の一部が崩れそうな箇所を見つけた。あそこを崩して白いガーディアンを瓦礫の下敷きにしようと考え実行に移す。
走るスピードでは白いガーディアンに勝てそうになかったので、レイピアで牽制しながらゆっくりと崩壊しそうな遺跡の下へと誘うこむ。こちらの考えは読まれてないようで、無防備に誘いに乗ってきた。
遺跡の下へ来ると、左腕に忍ばせた、エルヴァラのサブウェポンである分銅鎖をひび割れた遺跡の柱へと投げつける。
予定通り柱は崩れ、遺跡は崩壊して瓦礫が大量に落ちてきたが、想定以上に崩壊が激しく、私のいる床下まで崩壊は連鎖してきた。
「きゃっ!」
遺跡の瓦礫などと一緒に、地下にあった空間へと真っ逆さまに落下していく──
かなりの高さから落ちたのだろう、着地時の衝撃はかなりのものだった。痛い体をさすりながら起き上がり、周りを見渡す。
「うっ……しっ、白いのはどこ!」
地下空間には光る苔が無数に繁殖しているようで、周りの状況を確認できるほどに明るい。しかし、白いガーディアンの姿は見えなかった。
もしかして崩落時に離脱して落ちなかったのだろうか、それとも瓦礫の下敷きにして倒した? そう考えたのだが、答えはそのどちらでもなかった。目の前にあった遺跡の瓦礫が盛り上がっていく──瓦礫を掻き分けるように、あの白いガーディアンが姿を現した。
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