第149話 猛攻/渚

丘上の砦に援軍がやってきたのを確認したからか敵の攻撃が激しさを増して再開される。5隻のライドキャリアを先頭に、敵の大部隊が迫ってきていた。


「バリスタ全門発射準備急げ!」


砦を守るテミラ軍の隊長が声をあげる。砦内は迫り来る敵軍に対応する為に慌ただしく動いていた。私たちアムリア軍も敵を迎え撃つ為に準備を進める。


「そっちのライドキャリアを砦の側面につけて城壁を厚くして! 第一魔導機隊は砦の防衛を、第二魔導機隊は正門前で敵を迎え撃ちます!」


ユキハの指示に従い、みんな持ち場についた。私はジハードとデルファンと一緒に砦正門前で敵を待ち構える。今まで見たことないような大軍の行軍に正直少し恐怖を感じていた。


「ざっと見ても300はいるわね……こちらは80、厳しい戦いになるのは間違いないわね」

「ふっ、数だけだろ、兵の質と士気の高さではこちらが上だ」

ジハードが強がりなのか、見えない優位を訴える。


敵のライドキャリアからバリスタの矢が打ち出され、それが戦いの合図となった。敵先鋒のライドキャリアとライドキャリアの間から、敵がワラワラと溢れ出てくるように砦に迫ってくる。


砦の正門を破壊するべく敵の部隊が駆け寄ってくる。それを迎え撃つべく、砦からはバリスタと、魔導機の構えるアローから一斉に矢が放たれた。


矢によって敵機が次々と串刺しになって倒れていく。しかし、敵の数が多く、矢を掻い潜って正門前までくる敵機も少なくなかった。正門前でその敵機たちと激しい乱戦へと突入した。


大きな斧を振り回して攻撃した敵機を太刀で斬り伏せ、さらに走って近づいてくる敵の頭部を切り飛ばした。私は自分に迫ってくる敵機を斬り伏せながら、仲間を攻撃する敵機も倒していく。私が敵を倒せばそれだけ味方が助かる、そう考えていつもより攻撃的な精神状態になっていた。


私たちは雪崩れ込んでくる敵機を次々に倒していき、正門前の戦況は有利に進められているように見えた。しかし、そんな幻の優位は轟音と共に掻き消される。


バチバチと放電する音が発しながら、丸い樽のようなものが飛んできて砦の城壁に命中する。すると爆弾が何かが落ちたような轟音が鳴り響き、設置されていたバリスタを巻き込んで城壁が吹き飛ばされる。


「い、今のはなに!!」


ユキハが未知の攻撃に驚き叫ぶ。

「敵のライドキャリアから飛んできてるな、ルジャが用意した新兵器か……」

ジハードがそう見解を示すが、ユキハはそれを否定した。

「ルジャなんかにこんな兵器用意できないわよ……おそらくヴァルキア帝国から提供された物でしょう」


どこから出てきた兵器か正解はわからないけど、この攻撃によって次々と味方のバリスタや砦の城壁が破壊されている現実は変わらず、一気に窮地へと追い込まれていった。


「砦のバリスタは全て全壊、城壁に展開してた魔導機隊の半数が大破!」


完全に防御力が無くなった砦へと、敵の魔導機隊が迫ってくる。さっきまでは砦からの援護があったので優位に戦えていたが、それがなくなれば数で劣る私たちにそれを防ぐ手立てはなかった。


「正門前の部隊は砦内に撤退して!」


ユキハに言われるまでもなく、大軍に押し込まれるように私たちは砦内へと逃げ込んだ。


「正門を守れ! 中に雪崩れ込まれたら一溜りもないぞ!」

正門前で半円に陣形を組んで、中に突入してくる敵機を必死に防ぐ。だけど、その必死の抵抗も虚しく、状況は悪化する一方であった。


「ライドキャリアが燃えている……」

砦の側面に配置したライドキャリアから火の手が上がる。さらに大きな爆発音が響き、ライドキャリアごと城壁が破壊されるのが見えた。


「大変……側面の城壁が破られたら……」


ユキハの懸念は現実のものとなる、一際大きな轟音と同時に側面の壁が吹き飛んだ──そして大きな穴が開き、そこから敵魔導機が雪崩れ込んできた。

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