第142話 閃光のマインゴーシュ
迎えの部隊との合流地点である北西の山に到着すると、ラネルたちにはその場で待機してもらって、俺は山上へと登り周りの状況を確認する。
ジャンたちが敵の大規模部隊と戦闘しているのがここからでも見える。さらに北東方面を見ると、敵の増援部隊が近づいているのを確認した。
あの増援が流れ込んでくると厄介だな、今のうち叩けるといいんだけど……
しかし、ラネルやテミラの兵たちを連れてアレに攻撃を仕掛けるのは無謀だな……どうするか……そうだ、迎えの部隊が来たらラネルたちを任せて、俺は単騎であの増援を討ちにいくか。
そうだな、そうしよう。そう考えてると、下から合図が送られてきた。何かあったみたいなので急いで降りる。
「勇太さん、敵部隊が近づいてきています」
下に降りると、すぐにラネルがそう言う。
上からでは木々に阻まれ見えなかったけど、中規模の敵部隊がこちらに向かってきていた。
敵機の数はざっと見て五十機ほど、すでにこちらに気づいているようでまっすぐ向かってきていた。一人だけなら逃げれるかもしれないけど、ボロボロの仲間を連れては逃亡は無理だろう。
「ラネル、あの数は、君らを守りながら戦うのは難しい、後退して隠れててくれるか」
「そんな……いくら勇太さんでもあの数をお一人で戦うのは無謀です! 私も戦います!」
「そうです、我々も戦わせてください!」
ラネルとテミラのライダーたちがそう言ってくる。気持ちは嬉しいけど正直、一人の方が戦いやすいんだよな、かと言って足手纏いだとはっきり言うのはなんだしな……
「わかった、それじゃ、俺が仕留め損ねた敵を後方で迎え討ってくれるか」
それに同意したラネルたちは後ろに下がってくれた。よし、それじゃ、後ろには一機も行かせないつもりで戦うか。
「マスター、近づいてくる敵機は52機、アルレオのみで殲滅するには、20分ほどの時間が必要です。その間に敵の増援が来る確率は65%、できれば戦闘を回避することを推奨します」
フェリがそう助言してくれる。
「悪いが戦闘は回避できない、さらに敵を後方へはいかせたくないのだけど、可能か?」
「現状では一機も後方への移動を防ぐのは不可能です」
「現状とはどう言う意味だ、可能にする方法があるのか?」
「マインゴーシュを閃光モードに切り替えて下さい。一度に発動できる閃光モードの継続時間は10分ですが、その間に敵を殲滅すれば可能です」
「閃光モードとはなんだ?」
「閃光モード中にマインゴーシュを振ると、強烈な光を発するようになります、広範囲の敵に目眩しを行うことができますので、多数の敵との戦闘では効果的です」
なるほど、これで目眩しで足止めしながら敵を倒していけばいいんだな。
閃光モードの切り替えは握りの部分を回転させることで行えた。回転させると、カッシャっと音を立ててマインゴーシュの形体が変わる。
敵の先鋒が近づいてきたので、試しに使用してみた。閃光モードのマインゴーシュをサッと振る。するとピカッと強烈な光りが周りに放たれ、接近してきた敵機の動きが止まる。
アルレオのスクリーンはラフシャルによって、強烈な光量を自動調整する機能が取り付けれているそうで、マインゴーシュの目眩しは効かない。動きの止まった敵機を一方的にエストックで貫いた。
これは便利だな、こいつがあれば確かにあの数相手でも一機も逃さず倒していけそうだ。
しかし、閃光モードの使用時間は10分とそれほど長くはない、急いで敵部隊の殲滅に取り掛かった。
実際、目眩しの範囲がどれくらいあるのか確認しながら、使用してみたのだが、想像以上に範囲は広いようだ。半径50mくらいの魔導機に効果があるようで、高速で移動しながら目の眩んだ敵機を次々と破壊していく。
だけどこれって、味方が近くにいる乱戦では使用できなさそうだな。仲間の目まで眩ましてしまいそうだ。
一回の閃光で、敵の魔導機は5秒ほどは行動不能に陥る。魔導機の戦闘で5秒の行動停止は致命的だと思う。敵はほとんど抵抗することもできず、何が起こっているのかも理解することもできないうちに、52機いた敵機の大半は無残な姿で地面に転がった。
生き残った敵機は得体の知れない攻撃に恐れて、一目散に逃げ出した。
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