第106話 戦いの場へ

レイデマルト公爵領への移動の途中、ジャンとエミナが話をしたのだけど、どうやらジャンの方は相当ヤバい状況のようである、これは俺一人でも先に行った方がいいだろうと飛行しようとしたのだが……


「マスター、ヴィクトゥルフ・ノヴァの発動、連続での飛行により、蓄積されたエーテルが不足しています。さらにルーディアコアの磨耗化によりパフォーマンスの低下が見られます、コアメンテナンスを行ってください」


「えっ! どう言う意味?」

「このままでは長く飛行する事はできません、エーテル補充を行ってください」

「エーテルの補充ってどうやるんだ」

「自然摂取でもエーテルは蓄積されますが時間がかかります、できればエーテルポットなどのを使用して早急に回復する事を推奨します」


「エーテルポットなんてないぞ」

「それでは自然摂取での回復を待ってください」

「それはどれくらいかかるんだ?」

「この辺りのエーテル濃度ですと、約10368000秒ほどで全回復します」


秒じゃどれくらいの時間かわからないけど、すぐに回復ってわけにいかないのはわかった。


「エーテルがこのままだと、どうなるんだ?」

「ヴィクトゥルフの機能が大幅に制限されます」

「具体的に説明してくれ」

「ヴィクトゥルフ・ノヴァは使用できません、また、今のエーテルの残量ですと、飛行可能時間は300秒が限界です、さらに防御シールドの展開もできません」


「そうか、こりゃ飛んで駆けつけるわけにもいかなくなったな……」


「マスター、ルーディアコア磨耗化の状況も深刻です、早急にコアメンテナンスを行ってください」


「コアメンテナンスってなんだ?」

「コア技術者によるルーディアコアの最適化作業です」


コア技術者ってライザに頼めばいいのかな……


「今、メンテナンスができないけど、このまま戦ったらどうなる?」

「パフォーマンスは現状でも大幅に低下しています。さらに最悪の場合ルーディアコアの不具合により機能を停止する恐れもあります」


戦闘中に止まったら最悪だな……でも、アルレオに乗り換えるとしても機体は向こうにあるしな。


「フェリ、現状、メンテナンスもエーテルの補充もできない、それでもヴィクトゥルフで戦わないとダメなんだ、なんとか君の力で機体停止だけは回避してくれるか」


「──了解しました、最善の方法を提案いたします」



ライドキャリアでの移動ではやはり時間がかかってしまった。俺たちがレイデマルト公爵領へと到着したのは数時間後であった。


「良かった、まだ戦闘中見たいですわ」

激しい戦闘の様子を見て、リンネカルロがホッとしたようにそう言う。


「ジャン、状況はどうなの?」


「エミナ、遅えぞ! 状況は最悪だよ、なんとかギリギリ持ってる感じだ、早く救援に来てくれ!」


「すぐに向かいます! 勇太、聞いてたよね、早く救援に向かいましょう」


「わかった」

ここからなら飛んでいけるかな……そう考えているとリンネカルロがなぜか俺たちを止める。


「ちょっと待って! あそこに見えるのはムスヒムのライドキャリアですわ……」


「えっ! どう言う事だ?」

「どうやら遅れて到着したことで、ムスヒム本隊の後方に出たようです……ここからなら直接、ムスヒムを狙うことができますわ」


「よし! ムスヒムを討とう!」


「ちょっと、救援はどうするのよ」

「二手に分かれましょう、私と勇太の二人でムスヒムを討ちにいきますわ、エミナたちは救援に向かってください」


「敵の本隊に二人で大丈夫?」

「天下十二傑と伝説の機体ですわよ、問題ありませんわ」


確かにリンネカルロと二人ならどうにでもなりそうな気がする。


ここで俺たちは二手に分かれた、俺とリンネカルロはムスヒムを討つ為に敵本隊に強襲をかける。エミナとナナミ、それにアーサーは護衛騎士たちを率いてジャンたちの救援に向かうことになった。

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