第95話 砦の戦い
「俺が突っ込んで注意を引くから、ナナミは混乱した敵を片付けていってくれ」
「うん、わかった。気をつけてね、勇太」
俺は敵の本陣に向かって全力で走っていく、ヴィクトゥルフは驚異的な脚力で、アスリート並の走りで一気に敵陣へと突入した。
「て……敵襲!」
敵兵の一人が接近に気付いてそう騒ぎ始める。周りの魔導機もヴィクトゥルフの姿を見て急いで武器を構えて応戦しようとした。
だが、あっと言う間に俺は敵陣深くまで突入して、さっきの戦闘で拝借した戦斧をぶんまわし、次々と敵機を破壊していく。
「なんだこの魔導機、恐ろしく速くて強いぞ!」
「回り込め、囲んで一斉に攻撃するだ!」
敵は数を生かして包囲して攻撃しようとヴィクトゥルフを囲むように陣形を動かし始めた。だが、襲撃者は俺だけではない、後から突撃してきたナナミのヴァジュラに、包囲しようとしていた魔導機たちは次々に破壊されていく。
「新手だ! こっちも強いぞ!」
ナナミも剣と盾の使い方がかなり上手くなったな……鉄壁の防御と隙のない攻撃で、多人数相手にも圧倒する姿に感心する。
俺も負けていられない──戦斧を思いっきり振り被り、10機くらいの魔導機が固まって陣形を組んでいる集団に向かって、それを投げつけた。戦斧はブンブンと激しく回りながら敵機の集団に襲い掛かる──ゲームか何かで名前を付けるならアックストルネードといったところだろうか、戦斧は触れた魔導機を分解しながら勢いを弱めることなく突き進み、そこにいた敵機を無残な残骸へと変えていく。
その攻撃は敵に恐怖を植え付けるには十分の威力があった、驚き戸惑っている敵機の一つを捕まえ、力ずくで頭部をもぎ取り、腕を引きちぎると、ボディーを持ち上げて、近くの敵に投げつける──二体は激しくぶつかり、どちらも白い煙のようなものを吐き出して停止した。その二体が持っていた二つの剣を両手に持つと、アリュナの双剣のようなスタイルでさらに残った敵機の殲滅に取り掛かる。
深く踏み込み、右の敵機を内から外へ剣を振り切り払う、同じように左の敵機も切り払うと、体を回転させながら前進して、大きな両手持ちの剣を構えた大型の魔導機を両手に持った二つの剣で刺し倒す。
アリュナのように華麗な動きとはいかないが双剣も悪くない、早い動きで剣を振りまくり、一振り一殺で敵を倒していく。
ナナミは敵の攻撃を盾でいなしながら、剣で確実に敵を仕留めていた。堅実な戦い方は安定感があり、見ていて危なげない。
「ふんっ! 少しは腕に覚えがあるようだな、ここは俺が相手になってやろう」
敵の大将風の魔導機が首をコキコキしながら前へ出てきた──が、敵の殲滅を急いでいる俺は、まだ何か言いたそうなその大将の言葉を遮るように、素早く接近して大将首を飛ばした。
余程その強さを信頼されていたのか、大将を瞬殺すると敵方が騒然とする。そしてもはや戦う気力もなくなったのか、蜘蛛の子を散らすように撤退を始めた。
そこに、砦に立て籠もっていた味方の軍が動き出した。俺とナナミの攻撃で完全に崩壊した敵軍に対して、砦から出撃して総攻撃を開始する。そこからは一方的な掃討戦となり、逃げ遅れた敵を確実に仕留めていった。
全ての戦闘が終わると、砦の軍、王族親衛隊の部隊、全てが俺の前に集合してくる──そして驚くことに、全員が息を合わせたようにヴィクトゥルフの前に跪いた。
「まさにあなたは建国の英雄ルザークの再来、国宝ヴィクトゥルフを乗りこなしているのがその証拠、我々、ここにいる全ての騎士は、あなたの指揮下に入ることを誓います」
「いや、俺はリンネカルロに雇われてるだけのただの傭兵で……」
「どうかこの国を、メルタリア王国をお救いください!」
有無を言わさず、騎士たちはそう訴えかけてきた……いや、どうしたもんか……俺が困っていると、ナナミが無責任なことを言ってくる。
「どっちみち、リンネカルロの依頼があるからこの国の為に戦うんでしょ、良いじゃない指揮してあげなよ」
「たく……仕方ない、リンネカルロたちと合流するまでなら面倒見るよ、だけど俺は自分で戦うことしかできないからな、後は勝手にしてくれよ」
「はっ! それこそまさに、自らが先頭で闘うことで軍を率いた英雄ルザークと同じ、我々はあなたについて行き闘うだけです!」
英雄ルザークとやらもこんな感じでただ単に持ち上げられただけなんじゃないだろうか……そんなことを考えながら次の行動をどするか考えていた。
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