第91話 捜索
カロン公爵邸が派手に潰されているのを見た俺とナナミは、周辺を調べた……みんなの行き先の手掛かりがあればいいんだけど……
「大規模な戦闘があったみたいだけど、壊された魔導機すら見当たらないな」
「そうだよね、どうしたんだろ」
魔導機の小さな部品などは散乱しているので、戦闘で破壊された魔導機があったようだけど、その本体は無くなっている……前にジャンが戦争なんかで破壊された魔導機を回収する業者があるって言ってたけど、いくらなんでも回収されるのが早すぎのような気がした。
「ダメだな、手掛かりは無さそうだ」
「勇太、どうしよう……」
「そうだな、なんとか情報を手に入れる為に近くの町に言ってみるか」
「大丈夫かな、悪い王子の手下がいっぱいいないかな」
「魔導機を何処かに隠して、徒歩で町に入れば誰も俺たちのことなんて気にしないだろ」
「そっか、そうだよね」
と言うことで俺たちは近くの街を訪れることした。訪れた町はカロン公爵領内の小さな町で、そこの酒場へ情報を得る為に訪れた。夕方だと言うのに酒場は大変賑わっていて、ガヤガヤと騒がしく酒を呷っている。
俺とナナミは店に入ると空いているテーブルの席につき、食事を注文した。
「飯だけかい?」
「ああ、食事だけでいい」
「そうかい、うちのエールは最高なんだけどね」
「ナナミ、フルーツも食べたい」
「じゃあ、このフルーツ盛り合わせを一つ追加で」
「あいよ」
むやみやたらと聞きまくるのは危険なので、まずは食事をしながら周りの会話に聞き耳を立てることにした。大きな戦闘があったのなら、この辺りでは大ニュースになっていて、酒が入った話題としては最高の題材だろう。おそらく話題にするテーブルがあるはずだ。
そして、隣のテーブルの人達の話を聞いていると、予想通り、昨日の夜カロン公爵領内で大きな戦闘があったようで、その話題で盛り上がっていた。
「昨日の戦闘、どうやらムスヒム王子が王国軍を動かしたようだぞ」
「うちの領主と戦争か? ムスヒム王子にとってはカロン公爵は義父だろ、そんなことありえるのかね」
「まあ、だからか知らねえが、戦闘自体を王国軍は無かったことにしたいようで、昨日の朝早くに戦闘の痕跡をコソコソ隠してたみたいだけどな」
「どうしてお前、そんなこと知ってんだよ」
「俺の弟が王国軍にいてな、壊れた魔導機の運搬とかの仕事を俺も引き受けたんだよ」
「よくそんな隠蔽するような仕事を民間にやらせたな」
「急いでたみたいだな、まあ、もちろん口止めされたけどな」
「おいおい、それをベラベラここで喋ってるのかよ」
「いいじゃねえか、王国軍なんてここにはいねえだろ」
やっぱりムスヒムとカロン公爵の間で戦いがあったのは間違いなさそうだ……後はその戦闘の結果と、みんながどこに行ったか話さないかな……そう思っていると、会話は進み、戦闘結果の話へと進んでくれた。
「それでよ、戦いはどっちが勝ったんだよ」
「そんなの王国軍に決まってるだろ、数が違うだろ数が」
「じゃあ、うちの領主は殺されちまったのかよ」
「いや、逃走したみたいだぞ、それで今、王国軍は必死で追ってるみたいだ」
「逃げるったって、王国軍相手に逃げる場所なんてないだろうに」
「レイデマルト公爵領方面に逃げたようだな」
「まあ、逃げるとすればそっちしかねえか、他は全部、ムスヒム王子の勢力圏だからな」
よし! 聞きたい情報が聞けた、逃げたってことはみんな絶対に生きているな。レイデマルト公爵領、どっちの方角だろうか……
その後、食事を終えると、そっと酒場の店主にレイデマルト公爵領の方角を聞き、酒場を出た。
「みんな大丈夫かな……」
ナナミが心配そうにそう呟く。
「アリュナたちが簡単にやられるかよ、絶対に大丈夫だよ」
「そうだよね、みんな強いから平気だよね」
やはり心配じゃないと言えば嘘になる、俺たちは魔導機を隠していた場所へ戻り、すぐにレイデマルト公爵領へと出発した。
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